私はSIP-adus(自動走行)の委員を努めている。“SIP”といっても聞き慣れない言葉かもしれないが、SIPとは戦略的イノベーションプログラムの略で、科学技術イノベーション実現のために創設され、2014年にスタートした国家プロジェクトである。
SIP-adus(自動走行)は、SIPが採択する10課題のひとつとして、すでに第1期は2018年度に終了したが、自動走行はインフラ協調に長い時間がかかるために、2018年度から重複して第二期が進行。現在進行形で高度な自動運転、特に協調領域の開発に取り組んでいるところだ。自動走行に関する共通の開発課題を切り分け、協調領域を明確にし、国費を投じて開発するために府省連携の体制を採っている。第二期では、インフラ協調などを含めて、「得られる膨大なビッグデータをどう活かすのか」ということを大きな課題として捉え、「データのシミュレーションが大切」だと、SIP-adus葛巻PD(プログラムディレクター)は考えている。
そこで重要となるのが、自動走行に欠かせない各種センサー(カメラ/レーダー/ライダー等)のシミュレーション技術だ。実際の交通環境でテスト評価しても、そのユースケースが膨大なため、リアルな実走行テストでは限界がある。そこで性質が異なるセンサーをフュージョン(複合)したシミュレーションが必要となり、各種センサー単独の解析は前例こそあるが、センサー・フュージョンしたシミュレーションは日本のSIPが初めてトライしたといえるだろう。
シミュレーション技術を支えるデジタル技術
シミュレーション技術にとって重要となるのは、デジタル技術だ。昨今、AIの進化や5Gの市場導入が期待されているが、さらにその基本となるのは、いまや空気のように私たちの社会に浸透しているコンピューターの存在である。AIはコンピューターの発展型だが、人間の知覚とは異なり、デジタル信号(数字の0か1)に置き換えないとコンピューターは機能しない。つまりコンピューターが理解できる言語として、デジタル技術が不可欠となる。ではデジタル技術が自動車の設計に、どのように関わってきたのかトヨタの事例を挙げてみたい。
私が初めてトヨタのデジタル・エンジニアリングの話を聞いたのは、2000年頃だった。当時話題となっていたコンパクトカー、Vitz(ヴィッツ)をベースとする、5番目のモデルとして登場した”bB“は、とてもユニークで斬新な設計手法を使って開発された。当時、トヨタはグローバル化の波に乗り、世界中に生産工場を建設。生産台数は急増していた。そこで、クルマの開発にかかるコストを大幅に削減し、開発スピードをあげるために、積極的にデジタル技術を取り入れた。その先兵がbBであり、試作車をつくらずに、わずか12ヶ月で量産市販に漕ぎつけている。加えて、デジタル技術は静的な設計手法だけでなく、生産技術部門でも応用され、“!V-Comm (Visual & Virtual Communication)”と呼ばれるシステムが採用された。bBのプロトタイプは、コンピューター内で開発され、サイバー空間での試作が可能となり、実際に工場のラインで製造する工程もサイバー空間の中でシミュレーションしていた。人間が組み付けやすいかどうか、その熟成度も高めることが可能となった。なかでも話題となったのは、衝突安全技術だった。実際に試作車をつくり、バリアにぶつけて車体変形や乗員(ダミー人形)の障害値を評価するのは時間とコストが膨大にかかる。そこで登場したのが衝突のシミュレーション技術だった。この技術のおかげで、自動車の安全性が飛躍的に高まったことは言うまでもない。デジタルとシミュレーションは自動車開発の縁の下の力持ちであると同時に、今後益々重要度が増してくる分野なのは間違いない。
シミュレーション技術の重要性。アンシス社の持つ技術力とは
フェラーリ 488 GTE EVOの空力シミュレーション
シミュレーション数値解析をベース技術とし、CAE(Computer Aided Engineering)ソフトウェアを開発・提供する、米国に本社を置くアンシス社の日本法人を取材した。現在、自動運転や電動化が進むなか、同社は日系OEMやサプライヤーに、シミュレーションによるソフトウェア開発やトータルソリューションを提供しているリーディングカンパニーのひとつである。いまアンシス社が特に注力しているのは、流体力学を駆使した空力シミュレーションだ。最近はF1レースだけでなく、乗用車の開発にも空力特性が求められている。ひと昔前は、ウインドトンネルという、大掛かりな風洞実験室でテストしていたが、アンシス社の技術を使うと、サイバー空間で車体形状の評価が可能だ。F1からフォーミュラE、あるいはフェラーリのような高性能スポーツカーの開発には空力シミュレーションは欠かせない。
車内における太陽光反射についてのシミュレーション
その一方で、空力以外の分野でもアンシス社の提供するシミュレーションが活躍する。最新のマツダ車が採用するインテリジェントヘッドライトは、LEDを使って高度化されている。つまり光の設計の自由度が大きくなったので、その多様性を評価する必要が生じている。そこで開発プロセスとして、人の目に必要な輝度と法的に必要な輝度の両方をシミュレーションすることで、現物の試作回数を大幅に減らすことができた。さらに技術者が見逃しがちな光漏れもシミュレーションで発見できる。さらに驚くのは、車内の内装に、どのように太陽光の反射するのか、その影響も評価できる。人が感じる視覚を、実際の物理データで可視化できるという。
Flir社の赤外線カメラで物体の検出、識別したデータをAnsys VRXPERIENCEに統合
部品点数の多い自動車開発において、製品クオリティ、開発速度をあげるために、シミュレーション技術の重要性が高まってくるが、「今後はパーツ類を組み合わせた際のバランスや必要なスペックをシミュレーションし、開発コストのさらなる削減や安全性の向上に寄与できる段階に移っていくと思います。例えば、赤外線センサーをアンシスの最先端の運転シミュレータに統合し、超現実的な仮想空間上での評価、テスト、検証を実現する環境構築の取り組みは、既に当社とFLIR Systemsとの技術協力のもとで進行中です。これからは、センサー類、レーダー類、ソフトウェアのテストを膨大な数のシナリオを用いてシミュレーションで実行することで、スピード感を持って膨大なデータを蓄積して開発に応用できる時代になります」と、マーケティング部の柴田克久部長は話をしてくれた。そしてこの膨大な数のシミュレーションというのが非常に有益で、エンジニアが行う数万マイルに及ぶ数千もの運転シナリオを僅か数日にてシミュレーションが可能だそうだ。その精度も、比較的稀で難しいパターンのシミュレーションをも実現出来るとのこと。このことにより加速度的にADAS開発が進むのと同時に安全性の向上も期待出来る技術だ。
CASE革命で産業構造が変わる
国際自動車ジャーナリスト 清水和夫氏
CASE(コネクト・オートノマス・サービスシェア・電動化)と言われて久しいが、CASEを実現するのはIOTにかかっている。これは政府が掲げるSOCIETY5.0にほかならないが、その基盤技術はデジタル技術とシミュレーション技術である。この分野を高度に洗練させることは、次の産業力発展に大きく貢献することは間違いないだろう。その意味ではこの分野で実績を持つアンシス社の活躍の場は、無限に広がるのではないだろうか。
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March 30, 2020 at 05:00AM
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