エジルの起用法は1つの論点
グアルディオラと比較しても「前進する縦パスのタイミングや質」に固執するアルテタのチームにおいて、中盤にブカヨ・サカやジョー・ウィロックを配置することは理に適っている。
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彼らはパスでの前進が難しいときに、中盤からのボール運びによってサポートすることが可能なカードだ。彼らのように若く推進力のある選手を置くことで、アルテタはチームの前進に幅を持たせようとしている。グラニト・ジャカは展開力と速いグラウンダーの縦パスを得意とするという意味では欠かせないカードであり、アルテタは彼の残留を望んでいるようだ。
一方で、アーセナルの課題となっているのは縦パスを受ける選手の不足だ。0トップ的に起点になるプレーを得意とするラカゼットへの依存は深刻で、オーバメヤンは縦パスを受けるような局面では力を発揮しづらい。
ペペは加入当初は純粋なウイングに近かったが、徐々にハーフスペースで背負うようなプレーを増やしており、彼の成長はチーム全体にとって鍵となりそうだ。離脱してしまったガブリエル・マルティネッリはプレーエリアが広く、チームとして重要なオプションになるだろう。
それこそダビド・シルバのような選手が中盤のポケットでボールを受けてくれれば、アーセナルのフットボールは破壊力を増していくに違いない。そう考えると、メスト・エジルをどのように使っていくかも1つの論点だ。最近のアーセナルが苦しむ展開としては「ボールを保持していても効果的な縦パスに繋がらず、焦ったところをカウンターで仕留められてしまう」というパターンだ。
アーセナルの未来を背負う男の未来は…
また、ゴール期待値が低い試合が多いことも懸念点だ。前述したマンチェスター・シティ戦のゴールも、角度のないファーサイドからオーバメヤンが決めている。トッテナム戦ではラカゼットがミドルシュートを沈めているが、チームとして再現性のある形で「ゴールが決まりやすい状況」を生み出すことは出来ていない。あくまで攻撃の最終局面は個の力に依存しているのが現状で、そこを打破するアイディアは必要になってくるだろう。
チーム文化の醸成という観点で考えれば、アルテタは「チーム・ケミストリー(化学反応)」という言葉を好んで使っており、これはモイーズやヴェンゲルのチームにおいて重要視されていた考えだ。コロナ禍の中断期間において、アルテタは選手たちとの対話を重んじることで「チーム・ケミストリーの向上」に努めていた。
選手間の相互理解を促進し、長期的な視野でクラブに哲学を浸透させる。アーセナルの未来を背負う男は、歴史的な名将からチームの構築方法を学び、グアルディオラから先進的な戦術的アイディアを吸収してきた。迷うことなく自らの哲学をチームに伝えてきた若き指揮官は、この先どのようにアーセナルを導いていくのだろうか。
(文:結城康平)
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≪書籍概要≫
なぜ、あえて今アーセナルなのか。
あるアーセナル狂の英国人が「今すぐにでも隣からモウリーニョを呼んで守備を整理しろ」と大真面目に叫ぶほど、クラブは低迷期を迎えているにもかかわらず、である。
そのヒントはそれこそ、今に凝縮されている。
感染症を抑えながら経済を回す。世界は今、そんな無理難題に挑んでいる。
同じくアーセナル、特にアルセーヌ・ベンゲル時代のアーセナルは、一部から「うぶすぎる」と揶揄されながら、内容と結果を執拗に追い求めてきた。
そういった意味ではベンゲルが作り上げたアーセナルと今の世界は大いにリンクする。
ベンゲルが落とし込んだ理想にしどろもどろする今のアーセナルは、大袈裟に言えば社会の鏡のような気がしてならない。
だからこそ今、皮肉でもなんでもなく、ベンゲルの亡霊に苛まれてみるのも悪くない。
そして、アーセナルの未来を託されたミケル・アルテタは、ベンゲルの亡霊より遥かに大きなアーセナル信仰に対峙しなければならない。
ジョゼップ・グアルディオラの薫陶を受けたアーセナルに所縁のあるバスク人は、それこそ世界的信仰を直視するのか、それとも無視するのか。
“新アーセナル様式”の今後を追う。
【了】
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