「次世代移動無線通信システムである5Gの電波塔が放火される」という事件がイギリスで複数発生しています。実はソーシャルメディアを中心に「5Gが新型コロナウイルスの感染を拡大している」という誤情報が出回っているとのことで、IT系ニュースメディアのThe Vergeがなぜこのようなデマが拡散されたのかを報じています。
British 5G towers are being set on fire because of coronavirus conspiracy theories - The Verge
https://www.theverge.com/2020/4/4/21207927/5g-towers-burning-uk-coronavirus-conspiracy-theory-link
通信事業者のVodafoneによれば、2020年4月4日時点で、5Gの電波塔が放火される事例が既に4件も発生しているとのこと。また、通信事業者のEEが所有する5G電波塔のうち、バーミンガム市にある1つはまだ設置されたのみで稼働すらしていなかったにもかかわらず、火をつけられてしまったとのこと。EEの広報担当者は「放火された電波塔は、バーミンガム市の何千人もの人々に長年にわたって2G、3G、4G接続を提供してきました。私たちは可能な限り迅速に復旧させようと努めていますが、火災による被害は甚大です」とコメントしています。
5G tower set on fire in Birmingham, Acocks Green pic.twitter.com/1GNe2xxJLF
— Official #1 Birmingham Page (@imjustbrum) April 2, 2020
5G電波塔への放火事件が連続している理由として、FacebookやNextdoorといったSNSで「5Gの展開は新型コロナウイルスの流行に関連している」というウワサが出回っていることが報じられています。
ある説では、「中国では世界に先駆けて5Gを展開していたため、新型コロナウイルスが武漢で発生した」「伝染性の高い新型コロナウイルスが5Gにアクセス可能な大都市で自然に広がっている」と主張していますが、The Vergeは「これらの陰謀論は5Gの本格的な展開が始まっていないイランや日本でも新型コロナウイルスの流行が発生しているという事実と矛盾している」と指摘しています。
イギリス情報通信庁(Ofcom)によれば、ローカルFMラジオ局の番組へ2020年2月にゲスト出演した自称看護師が「5Gが人々の肺から酸素を奪い取っている」「5Gの展開は新型コロナウイルスの感染拡大に関連している」と語ったとのこと。もちろん自称看護師の主張には科学的根拠は全くありませんが、このラジオ番組の切り抜き音声やムービーはFacebookで広く共有されてしまっているそうで、このラジオ番組がイギリスにおける「5Gと新型コロナウイルスを絡めたデマ」拡散の火付け役になった可能性が高くあります。
5G causes coronavirus because it’s sucking the oxygen out of your lungs, according to a video being spread on Facebook. I want to ???? but the fact people believe this bullshit is genuinely scary pic.twitter.com/kY3g5MJtu9
— Tom Warren (@tomwarren) March 3, 2020
こうした誤情報が拡散された背景には、「5Gが健康に悪影響を及ぼすのではないか」という懸念があり、イギリスのタブロイド紙も5Gの健康被害を訴えていました。しかし、専門組織は「5Gによる健康上の問題はない」と既に論じており、イギリスの規制当局も「5Gの電磁放射レベルは国際ガイドラインよりもはるかに低い」と報告しています。
5Gの健康被害について放射線の科学専門組織が見解を発表 - GIGAZINE
それでも、5Gに対する陰謀論の拡散はとどまるところを知らず、5G開通用の光ファイバーケーブルを敷設する労働者に嫌がらせをするムービーがFacebookで出回るまでになっています。こうした事態を受けて、YouTubeは、「5Gが新型コロナウイルスの感染拡大に寄与している」と唱えるコンテンツを制限すると発表しています。
YouTubeが「5Gが新型コロナウイルスの感染拡大に寄与している」という陰謀論を唱えるコンテンツを制限すると発表 - GIGAZINE
陰謀論を拡散し、重要な通信インフラの破壊を推奨するFacebookグループに対処するべく、イギリスの通信事業者や専門家がFacebookに通報するものの、グループが削除されてもなお何千もの人々が5G電波塔への放火を訴えているという状況だそうです。また、The Vergeによれば、イギリスだけではなくアメリカでも同様の陰謀論が拡散されつつあるそうで、「ロシアによるデマ拡散キャンペーン」とセットで語られることも増えているとのこと。The Vergeは「医療従事者が伝染性の高いウイルスとの戦いに忙殺される一方で、電気通信事業者とソーシャルメディアは誤情報の拡散と戦う必要があります」とコメントしました。
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