初代レクサスが北米市場で大ブレイクを果たして以来、Cセグメント以上では日本車もプレミアムカーとして成功する例が増えてきた。いっぽうで、特にプレミアム性を持たせようとして登場したコンパクト&ハッチバックは、どれも大きく成功はしていない。その「なぜ?」を検証する。(本稿は「ベストカー」2013年3月10日号に掲載した記事の再録版となります)
TEXT/鈴木直也
■新型Aクラスに乗ってフト考えた輸入車の小さな高級車はなぜ評価されるのか?
「小さなプレミアムカー」というのは日本車が何度となくトライしては失敗してきたテーマなのに、欧州勢はここでアッという間に強力なラインアップを築いてしまった。
今回デビューしたAクラスもそうだけど、BMW1シリーズ、ミニ、アウディA1、シトロエンDS3/4など……。これ以外にも、ちょっとプレミアムなコンパクトカーは枚挙にいとまがないほどだ。
なかでも元気がいいのがBMW。
BMWの2012年度年間販売台数は約185万台で、アウディの145万台、ベンツの142万台を大きく引き離しているが、その大きな要因は世界トータルで30万台を売るミニの存在。
ミニと1シリーズの2枚看板で、プレミアムコンパクト市場で大きく稼いでいるわけだ。
対して、日本車はコンパクトカーが本業なのに、小さなプレミアムカーというと「うーん……」と首をひねるしかない。
まぁレクサスCT200hは最初からプレミアムを狙ったクルマだからイイとして、あとはオーリス(かなり微妙だな~)、インプレッサ(4WDはちょっとイイかも?)、アクセラ(モデルチェンジ待ち?)、ベリーサ(何年前のクルマだよ!)といったあたりしか思い浮かばない。
どーせ作っても売れないから、最近はもう最初からあきらめてる感すらある。
このあたりに、日本車の「プレミアムカー商売」の限界があらわれている。
クルマ本来の走りの機能をとりあえず別にすれば、プレミアムカーに重要なのはブランド力、デザイン、そして品質。ここをユーザーに評価してもらえなければ、割高なお値段を正当化できない。
初代レクサスが北米市場で大ブレイクを果たして以来、Cセグメント以上では日本車もプレミアムカーとして成功する例が増えてきたけど、小さいクルマではサッパリ。
日本車はコンパクトカーが“本業”ゆえにどうしても大衆車イメージが強いし、思い切った原価設定ができないから品質もほどほど。
そしてデザインはご存じのとおり、ちょっとアカ抜けない。この負のスパイラルから脱出できないかぎり、今後も日本から魅力的なプレミアムコンパクトが登場する望みは薄いといわざるを得ない状態だ。
だから、コンパクトクラスの日本車は、苦手なブランド力やデザインなどの「ソフトな価値創造」路線より、お得意の「機能の向上」に励んだほうがイイように思う。
たとえば、プリウスはプレミアムカーとはちょっと性格が違うけど、あの車格で中核グレード250万円というのは決して安いクルマではない。
にもかかわらず大ベストセラーとなっているのは、ユーザーがハイブリッドという機能を評価したから。
「ハイブリッドなら燃費で元がとれる」と厳密にコスト計算して買うユーザーもいるだろうが、より多くの人はもっと単純に「ハイブリッドというプレミアムなメカにエクストラマネーを支払った」と解釈すべきなのだ。
こういう路線で頑張るのは、メーカーにとってはシンドイ。だって、ブランドやデザインは構築しちゃえば原価ゼロだけど、高級なメカニズムは常にそれなりのコストを必要とするから。
でも、こういう路線でプレミアム化するとうれしいのはライバルがそうやすやすと追いつけないこと。
デザインなら著名なデザイナーを引き抜いてくればいいけどハイブリッドやSKYACTIVみたいな複雑な擦り合わせ技術は簡単にパクるのは不可能だもんね。
このへんが「技術立国」を国是とする日本の自動車メーカーの生きる道。やっぱり日本車は華やかなプレミアムカー作りより地道な技術開発のほうが向いているんだなぁ。
思い切った原価設定ができない国産車は、機能の向上でプレミアム化を図るべき!
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