設立から6年の日本のベンチャー企業が、小型ロケットの打ち上げに初めて挑む。めざすのは、「宇宙宅配便」サービス。ただ、運ぶためのロケットは、開発中も含め公開されていない。いったい、どんなロケットなのだろうか。
ベンチャー企業「スペースワン」(東京都)が開発したのが、小型ロケット「カイロス」。契約から打ち上げまでの時間を短くするなどの思いから、「時」をつかさどるギリシャ神話の神の名に由来する。
3月9日午前11時1分、和歌山県串本町にある発射場から打ち上げ予定。小型衛星1機を高度約500キロの軌道に乗せることがミッションだ。
衛星は、内閣官房が運用する本物の衛星。爆発などトラブルがつきもののロケット開発において、打ち上げ経験のない会社が、初号機から荷物を運ぶのは珍しい。
奈良の大仏と同じ高さ
カイロスは、全長約18メートル、直径約1.4メートル、重さ約23トン。高さは奈良・東大寺の大仏(台座を含む)とほぼ同じ。重さは荷物を載せた大型トラック並みだ。
特徴は固体燃料を使う点にある。
花火のように、燃料を混ぜて固めた固体燃料ロケットは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが打ち上げたH3などの液体燃料ロケットと比べて、部品が少なくて開発が比較的容易とされる。
とは言え、スペースワンは2018年に発足したばかり。時間のかかるロケット開発は、一筋縄ではいかないのが普通だ。
JAXAの的川泰宣名誉教授(宇宙工学)は「日本が培ってきたロケット技術が積み重ねられている」とみる。固体燃料ロケット「イプシロン」を手がけるIHIエアロスペース(東京都)が参画していることが大きいという。
70年続く「ロケット屋」から技術者が出向
日本の固体燃料ロケットの歴史は1955年、全長23センチのペンシルロケットに始まり、日本初の人工衛星を打ち上げたラムダ、小惑星探査機「はやぶさ」を運んだM(ミュー)5、現在のイプシロンへと進化してきた。
ペンシル以来、固体燃料ロケットを70年近く製造する企業が、IHIエアロスペース(前身を含む)だ。同社によると、技術者十数人がスペースワンに出向し、開発に従事。社内の工場でロケット部品も製造した。
「イプシロンをつくった当社の技術が応用されている」と担当者。スペースワンの豊田正和社長も「ゼロからの出発なら相当時間がかかった」と語る。
カイロスは、3回加速する3段式ロケットと、軌道投入するための小型エンジンからなる。構成はイプシロンと同じだが、カイロスの方が一回り小さい。「『ミニイプシロン』のようだ」と表現するロケット開発者もいた。
一方、「ミニ」ゆえの難しさ…
からの記事と詳細 ( まるでミニイプシロン? 発射近づく民間ロケット、開発6年なぜ完成:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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