日本サムスンから、ハイエンドゲーマーやエンスージアストユーザーをターゲットとするPCIe 4.0/MVNe M.2 SSD新モデル「990 PRO」が登場した。海外では既に発売済みとなっている製品で、国内ではやや遅れて登場した形だが、日本サムスンのPCIe 4.0/MVNe M.2 SSDとして最上位モデルであり、注目度は高い。
今回、990 PROの1TBモデルを試用する機会を得たので、仕様や性能面を紹介する。12月23日に発売開始となり、価格は1TBモデルが2万3,980円、2TBモデルが4万2,980円。
電力効率を高めた新コントローラ採用でPCIe 4.0の上限に近い速度を発揮
990 PROは、冒頭でも紹介しているように、日本サムスンのPCIe 4.0/NVMe SSDとして最上位となる最新モデルで、従来モデル「980 PRO」の後継となる。フォームファクタはM.2 Type2280、接続インターフェイスはPCIe 4.0x4、プロトコルはNVMe 2.0。容量は1TB、2TBの2種類。海外では4TBモデルも発表済みだが、国内での4TBモデルの発売は未定。
従来モデルの980 PROは、シーケンシャルアクセス速度がリード最大7,000MB/s、ライト最大5,000MB/sと、非常に高速な転送速度を実現することで大いに注目された。その後継モデルの990 PROではさらなる性能向上を実現。990 PROの主な仕様は以下の表にまとめたとおりだが、シーケンシャルアクセス速度はリード最大7,450MB/s、ライト最大6,900MB/sに達している。ランダムアクセス速度もリード最大140万IOPS、ライト最大155万IOPSと、980 PROとの比較で最大55%もの性能向上を実現している。
1TB | 2TB | |
---|---|---|
フォームファクタ | M.2 2280 | |
インターフェース | PCI Express 4.0 x4 | |
プロトコル | NVMe 2.0 | |
NANDフラッシュメモリ | TLC 3D NAND「第7世代 V-NAND」 | |
コントローラ | Samsung内製コントローラ | |
DRAMキャッシュ | LPDDR4 1GB | LPDDR4 2GB |
Intelligent TurboWrite 2.0 SLCキャッシュ容量 |
標準:6GB、Intelligent:108GB 最大:114GB |
標準:10GB、Intelligent:216GB 最大:226GB |
シーケンシャルリード | 7,450MB/s | |
シーケンシャルライト | 6,900MB/s | |
ランダムリード(QD1,Thread1) | 22,000 IOPS | |
ランダムライト(QD1,Thread1) | 80,000IOPS | |
ランダムリード(QD32,Thread16) | 1,200,000IOPS | 1,400,000IOPS |
ランダムライト(QD32,Thread16) | 1,550,000IOPS | |
総書き込み容量 | 600TBW | 1,200TBW |
保証期間 | 5年 |
SSDコントローラは、従来同様にSamsung内製コントローラを採用。980 PROに搭載されていた「Elpis Controller」と比較して電力効率が大幅に向上しており、1W当たりのパフォーマンスが50%向上しているという。なお、コントローラの型番は非公開だ。
NANDフラッシュメモリには、Samsungの第7世代「V-NAND」を採用。セルあたり3bitのデータを保存できるTLC仕様となる点は従来同様だ。DRAMキャッシュメモリはLPDDR4で、搭載容量は1TBモデルが1GB、2TBモデルが2GB。
TLC仕様のNANDフラッシュメモリを搭載していることで、書き込み性能を向上させるSamsungオリジナルのSLCキャッシュ技術「Intelligent TurboWrite 2.0」も搭載。SLCキャッシュ容量は標準で1TBモデルは6GB、2TBモデルは10GB確保するが、書き込み容量に応じて容量が自動的に拡張され、1TBモデルでは最大114GB、2TBモデルでは最大226GBとなる。
高速SSDで不可欠となる熱への対策も申し分ない。SSDコントローラやNANDフラッシュメモリチップの熱を効率良く発散できるよう、SSDコントローラにニッケルコーティングを施すとともに、基板裏面基にヒートスプレッダラベルを装着。同時に、従来モデルにも搭載されている熱監視システム「Dynamic Thermal Guard technology」も組み合わせ、常に最適な温度を維持し、長時間の利用でもパフォーマンス低下を最小限に抑えられるとしている。
総書き込み容量は、1TBモデルが600TBW、2TBモデルが1,200TBW。保証期間は5年。
試用した1TBモデルを見ると、基板表にはニッケルコーティングされたSSDコントローラとDRAMキャッシュメモリチップ、NANDフラッシュメモリチップが2チップ搭載されていることを確認。また裏面には銅箔を利用したヒートスプレッダラベルも確認できる。
Intel環境では公称のアクセス速度に到達せず
では、ベンチマークテストを利用して速度をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、「CrystaDiskMark 8.0.4」と「ATTO Disk Benchmark V4.01.0f2」、「PCMark 10 Storage Full System Drive Benchmark」、「3DMark Storage Benchmark」の4種類だ。
テスト環境は以下にまとめたとおりで、テスト時にはSSDにマザーボード付属のヒートシンクを装着し、ヒートシンクに空冷ファンのエアフローが届く状態で計測している。
テスト環境
- マザーボード:ASRock Z590 Steel Legend WiFi 6E
- CPU:Core i5-11400
- メモリ:DDR4-3200 32GB
- システム用ストレージ:Samsung SSD 950 PRO 256GB
- OS:Windows 11 Pro 64bit
まず、CrystalDiskMarkから。こちらは設定を「NVMe SSD」にして計測している。結果を見ると、シーケンシャルアクセス速度は、リードが7,127.82MB/s、ライトが6,761.82MB/sと、いずれも公称に届いていない。
この傾向はATTO Disk Benchmarkの結果も同様。こちらもリード、ライトとも公称の速度に届いていない。
また、ランダムアクセス速度についても、QD32/Thread16のライトが公称の速度から大きく下回っている。ただ、QD32/Thread16のリードと、QD1/Thread1のリード、ライトはほぼ公称通りの速度が得られている。
Samsungによると、公称のアクセス速度は、AMD X570/AMD Ryzen 7 5800Xの組み合わせで計測したものだという。つまり、公称どおりの速度を発揮させるにはAMD環境が必要となり、Intel環境では公称の速度が発揮されない場合がある、と考えられる。
この点は、Intel環境利用者にとって少々気になる部分ではある。それでも速度的には全く申し分ないものとなっており、ベンチマークテストで公称の速度が引き出せていないとしても、その違いを体感できるほどではないはずだ。そのため、基本的には問題ないと考えていいだろう。
PCMark10 Storage Full System Drive Benchmarkと3DMark Storage Benchmarkの結果は、十分なスコアが得られてはいるものの、同等クラスのハイエンドSSDの結果と比較するとわずかだが見劣りする印象。おそらく、こちらもIntel環境でスコアが伸びない可能性が高い。とはいえ、この差も体感できるほどではないと思われるので、ハイエンドSSDとして申し分ない性能が発揮できていると言える。
最後に、大容量データを書き込んだときの速度の変化をチェックしてみた。HD Tube Pro 5.75を利用して200GBのデータを連続で書き込んだ場合の速度変化をチェックしたところ、114GB付近で書き込み速度が大きく低下した。容量1TBの990 PROではIntelligent TurboWrite 2.0でのSLCキャッシュ容量が最大114GBということで、公称通りの結果となっている。ただ、速度低下後も1,300MB/sほどと比較的高速な速度が発揮されているため、これならSLCキャッシュが尽きてもまずまず快適に利用できそうだ。
Intel環境との相性は気になるが、定番ハイエンドSSDとして魅力
今回990 PROを試用して気になったのは、やはりIntel環境でベンチマークテストのスコアが公称の性能に届いていない、という点だ。このあたりは、SSDコントローラや、IntelのPCI Expressまわりの設計やドライバなどとの相性によるものとも考えられる。ただ、競合の製品ではIntel環境でも公称どおりの速度が確認できるものも多く、どうしても残念に感じてしまう。
ただ、この点を考慮しても、性能としてはハイエンドSSDとして全く見劣りするものではなく、ハイエンドゲーマーやエンスージアストユーザーがIntel環境で利用するとしても、十分に満足できるものと言っていいだろう。もちろん、AMD環境の利用者であれば、990 PROが備える性能を最大限に引き出せる可能性が高いため、より高い魅力のある製品と言える。
Samsung製SSDは、ハイエンドユーザーを中心に定番SSDとして根強い人気がある。そして990 PROについても、ハイエンドユーザーにとって十分な魅力を備える製品に仕上がっており、定番ハイエンドSSDとしてお勧めしたい。
からの記事と詳細 ( Samsungが繰り出すPCIe 4.0 SSDの最終形態「990 PRO」 - PC Watch )
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