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Friday, October 14, 2022

ミニトマト農家は元SE…畑違いの転職者が100%定着する秘訣は? 経験者が就農支援する「親方制度」 :東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

 静岡県伊豆の国市で、ITや金融など畑違いの職業から転職した人たちによるミニトマトの生産が広がっている。定着に貢献しているのは経験者が就農を支援する「親方制度」。希望者受け入れを始め20年以上になるが、手厚い支援により、就農後の定着率は100%を続けているという。(大島晃平)

ビニールハウスの中で、親方の高橋純哉さん(左)に教わりながら茎の調整作業する関野陽平さん=静岡県伊豆の国市で

ビニールハウスの中で、親方の高橋純哉さん(左)に教わりながら茎の調整作業する関野陽平さん=静岡県伊豆の国市で

◆土地探しや補助金の申請もサポート「人生を預かる覚悟で」

 同市で転職者らが生産しているのは、糖度が高く酸味のバランスも良い「伊豆の国ミニトマト」。JAふじ伊豆の生産者部会「伊豆の国果菜委員会」は農家の高齢化を理由に、静岡県の全国から非農家を募集する就農支援制度を利用し、2000年から希望者を受け入れてきた。

 転職者にミニトマトの生産を促してきたのは、新規就農者でも収穫量を確保しやすく、収益を上げやすいから。これまでに57人が就農。昨年9月には果菜委員会のメンバー全員が転職者となった。

 就農後の定着に貢献しているのが「親方制度」だ。就農希望者は1年間、親方を担う委員会メンバーの畑で修業する。親方は栽培方法の指導にとどまらず、就農時に必要な土地探しや補助金の申請までサポート。土地を借りる際の契約に同席する場合もあり、借り主の信用を補完することにも一役買う。

 大手企業のシステムエンジニアから転職し、現在は親方を務める高橋純哉さん(42)=伊豆の国市=は20年10月から1年間、元団体職員の関野陽平さん(35)=同=を受け入れ、土作りから葉の取り方、収穫物の管理まで自らの畑で教えた。

 高橋さんは「1年間で覚えられることは限られるが、人生を預かる覚悟で教えた」と振り返る。関野さんは高橋さんの畑の隣の土地を借りて就農。「独立後も高橋さんに畑を見てもらえる。ありがたい」と語る。

 果菜委員会の西山稔委員長(57)は「土地と費用の問題は親方が支え、販路はJAが確保してくれる。農家として独立できる道筋ができている」と語った。

 伊豆の国ミニトマトを使ったクラフトビールの完成式が19日、東京都大田区の「よい仕事おこしプラザ」で開催される。全国の信用金庫でつくる「よい仕事おこしネットワーク」(事務局・城南信用金庫)の生産者応援プロジェクトの一環。

◆手軽さが人気 ミニトマト収穫量、30年前の2.4倍に

 ミニトマトの生産は全国的に拡大している。農林水産省の野菜生産出荷統計によると、2020年の収穫量は30年前と比べて2.4倍、10年前と比べても1.5倍ほどに増えている。

 背景には、共働き世帯など忙しい消費者が増え、手軽に取れる野菜の需要が高いことがある。農林中金総合研究所の一瀬裕一郎氏によると、ミニトマトは切らずに食べられ、家事時間の短縮になる他、人手不足が課題の外食や中食なかしょくの調理現場でも作業を少なくできるとして取り入れられやすい。

 健康志向でサラダの消費は拡大しており、葉物の中にあると彩りになる点も強み。さらに糖度の高いミニトマトが登場するなど消費者の好みに合わせて品種も多様化し、消費が増える要因となっている。(寺本康弘)

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