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Sunday, February 13, 2022

1TBが1万円台半ばで高コスパ!PCIe 4.0対応SSD「WD_BLACK SN770 NVMe」の実力を検証 - PC Watch

Western Digital「WD_BLACK SN770 NVMe 1TB」

 Western Digitalから、ゲーミング/エンスージアスト向けSSDのWD_BLACKシリーズ新モデル「WD_BLACK SN770 NVMe」が登場した。従来モデル「SN750 SE NVMe」の後継として位置付けられており、大幅な速度向上を実現。また、比較的安価な価格も維持しており、コストパフォーマンスに優れる製品となっている。

 今回、いち早く容量1TBモデルを試用できたので、性能面などを見ていこう。発売は2月下旬を予定しており、実売予想価格は250GBが7,200円、500GBが8,000円、1TBが1万4,300円、2TBが3万5,500円。

従来モデル同様のDRAMキャッシュレス仕様ながら独自コントローラ採用で高速化

 「WD_BLACK SN770 NVMe」(以下、SN770)は、冒頭でも紹介しているように、従来モデル「WD_BLACK SN750 SE NVMe」(以下、SN750 SE)の後継となるPCIe 4.0 SSDだ。

 SN750 SEは、SSDコントローラにPhisonの「PS5019-E19」を採用するとともに、DRAMキャッシュレス構造とすることで、PCIe 4.0対応ながら比較的安価な価格を実現した、コストパフォーマンスに優れる製品だ。

 ただ、SN750 SEの速度はシーケンシャルリードが最大3,600MB/s、シーケンシャルリードが最大2,830MB/sと、PCIe 4.0 SSDとしてはそれほど高速ではなかった。特にSN750 SEは、WDのSSD製品の中でハイエンドレンジのWD_BLACKシリーズに属することもあり、その点がやや弱点となっていた。

 新たに登場したSN770も、SN750 SE同様にDRAMキャッシュレス仕様のPCIe 4.0対応SSDとなっている。ただ、WD独自開発のコントローラを採用するとともに、NANDフラッシュメモリに112層3D TLC NAND(BiCS5)を採用することで速度を向上。

 主な仕様は以下の表1にまとめた通りだが、シーケンシャルアクセス速度はリードが最大5,150MB/s、ライトが最大4,900MB/sと、SN750 SEから大幅に高速化。同様にランダムアクセス速度も高速化されている。PCIe 4.0 SSDハイエンドモデルには届いていないものの、十分な速度が発揮されるようになったと言っていいだろう。

 そのうえで実売予想価格は、1TBモデルが1万4,300円と、SN750 SEと大きく変わらない、比較的安価な価格が設定されている。PCIe 3.0 SSDと、PCIe 4.0 SSD上位モデルの中間に位置する価格で、性能と価格のバランスはかなり優れると言って良さそうだ。

SN770の基板表側。フォームファクタはM.2 2280で、PCIe 4.0×4、NVMe 1.4対応
裏面。1TBモデルでは裏面には一切チップを搭載しない
【表1】WD_BLACK SN770 NVMeの主な仕様
容量 250GB 500GB 1TB 2TB
フォームファクタ M.2 2280
インターフェイス PCI Express Gen4 x4
プロトコル NVMe 1.4
NANDフラッシュメモリ TLC 3D NAND(112層 BiCS5)
コントローラ WD独自コントローラ
DRAMキャッシュ 非搭載
シーケンシャルリード 4,000MB/s 5,000MB/s 5,150MB/s
シーケンシャルライト 2,000MB/s 4,000MB/s 4,900MB/s 4,850MB/s
ランダムリード(4KB) 240,000IOPS 460,000 IOPS 740,000IOPS 650,000IOPS
ランダムライト(4KB) 470,000IOPS 800,000IOPS
総書き込み容量 200TBW 300TBW 600TBW 1200TBW
保証期間 5年
実売予想価格 7,200円 8,000円 1万4,300円 3万5,300円

 SN770に採用されている独自SSDコントローラは仕様が非公開のため、詳しいことは分からないものの、過去のWD独自コントローラで採用されていた、NANDフラッシュメモリの一部をSLCキャッシュとして利用する「nCache 3.0」と同様の仕組みで高速な速度を維持しているものと考えられる。

 また、WD_BLACKシリーズに用意されている、省電力機能を無効化して常に最大限の性能を発揮させる「ゲームモード」にも対応している。

 このほか、独自SSDコントローラと、採用NANDフラッシュメモリの進化によって、電力効率が既存製品と比べて20%向上しているという。これにより、ある程度発熱は抑えられていると思うが、アクセス速度の速さを考えると、利用時にはヒートシンクを装着し空冷ファンの風が当たるように配慮すべきだろう。

 耐久性は容量によって異なるが200TBW~1200TBWと標準的。また保証期間も5年と長いため、安心して利用できそうだ。

 今回試用した1TBモデルを見てみると、基板には独自コントローラとNANDフラッシュメモリチップが1チップのみと、非常にシンプルな構造となっている。

従来モデルのSN750 SEでは、SSDコントローラにPhisonの「PS5019-E19」を採用していた
SN770では、WD独自開発のコントローラを採用している
搭載するNANDフラッシュメモリは1チップのみ。112層3D TLC NAND(BiCS5)を採用している

スペック通りの速度が発揮されることを確認

 では、ベンチマークテストを利用して速度をチェックしていこう。利用したベンチマークソフトは、「CrystaDiskMark 8.0.2」と「ATTO Disk Benchmark V4.01.0f2」、「PCMark 10 Storage Full System Drive Benchmark」の3種類。比較として、従来モデルSN750 SEの結果も掲載する。

 テスト環境は以下にまとめた通りで、テスト時にはSSDにマザーボード付属のヒートシンクを装着し、ヒートシンクに空冷ファンのエアフローが届く状態で計測している。NVMeドライバはWindows 10の標準NVMeドライバを利用。

【表2】テスト環境
マザーボード ASRock Z590 Steel Legend WiFi 6E
CPU Core i5-11400
メモリ DDR4-3200 32GB
システム用ストレージ Samsung SSD 950 PRO 256GB
OS Windows 11 Pro 64bit

CrystaDiskMark 8.0.2の結果

データサイズ1GiB
データサイズ64GiB

SN750 SE 1TB

データサイズ1GiB
データサイズ64GiB

 CrystalDiskMarkは、設定を「NVMe SSD」にして計測しているが、結果はスペックと同等以上の速度が得られているのはもちろん、SN750 SEと比較しても、大きく速度が向上していることが分かる。

 結果を細かく見ると、データサイズを64GiBに設定した場合には、データサイズが1GiBの結果と比べてランダム4K/Q32T16の結果がやや大きく低下しているが、SN750 SEよりは低下の割合が少なくなっている。このことから、大容量のデータアクセスが発生した場合でも速度低下の割合が少ないと考えられる。

ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2の結果

SN750 SE 1TB

 ATTO Disk Benchmarkの結果も、ほぼ公称通りのスコアが得られている。また、リード/ライトとも速度は安定して発揮されている。もちろん、SN750 SEとの比較でも大きく速度が向上していることが分かる。

PCMark10 Storage Full System Drive Benchmarkの結果

SN750 SE 1TB

 PCMark 10の「Storage Full System Drive Benchmark」の結果も、SN750 SEの結果を大きく上回った。バンド幅は585.31MB/sと、SN750 SEの319.92MB/sから大きな向上となっている。このテストは、Windows環境での実利用時の快適度を計測するため、SN770は実利用時の快適度もSN750 SEから大きく向上していると考えていいだろう。

HD Tune Pro 5.70を利用し大容量データを連続で書き込んだ場合の速度変化

SN750 SE 1TB

 続いて、HD Tune Pro 5.70を利用して、大容量データを連続で書き込んだときの速度変化をチェックしてみた。

 まず、SN750 SEで200GBのデータを連続で書き込んでみたところ、書き込み容量が64GBを超えたあたりで大きく速度が低下した。それに対しSN770では、250GBのデータを連続で書き込んでも大きく速度が落ちることはなかった。

 キャッシュの効果は250GBを超えても発揮されるようなので、かなり大容量のファイルを扱う用途でも速度が大きく低下して快適度が下がるといった場面も少なくなりそうだ。

 最後に、ヒートシンク未装着、エアフローもない状態でATTO Disk Benchmarkを実行した場合の温度の変化をチェックしてみた。SN770ではS.M.A.R.T.の温度情報が1分間隔でしか更新されないようで、細かな温度状況はチェックできなかったが、最も高い温度で82℃に達した。

 電力効率は高められているとは言え、さすがに比較的高速なPCIe 4.0 SSDということもあり、熱対策を行なわなければかなり高温となるようだ。そのため利用時には、やはりヒートシンクの装着やエアフローの確保が必須だろう。

コストパフォーマンスに優れるPCIe 4.0 SSDとして魅力的な存在

 見てきたようにSN770は、従来同様のDRAMキャッシュレス仕様ではあるが、SLCキャッシュの効果は申し分なく、実際の速度も従来モデルから大きく向上したことで、PCIe 4.0 SSDとして申し分ない製品に仕上がっていると感じる。

 しかも、1TBモデルの実売予想価格が1万4,300円と比較的安価に設定されている点も大きな魅力で、コストパフォーマンスはかなり優れると言える。

 もちろん、ピーク速度やキャッシュの仕様という点ではハイエンド製品の方が優位なので、ハイエンドゲーミングPCなど究極の速度を求める用途には上位モデルをお勧めしたい。

 しかし、エントリーレベルのゲーミングPCや一般用途のPCであれば、SN770の速度で十分満足できるはずだ。そのため、安価ながら十分高速なPCIe 4.0 SSDが欲しいという人にとって、魅力的な存在となるはずだ。

 ところで、SN770をPlayStation 5のM.2拡張スロットに装着してみたところ、問題なく認識し、フォーマット後の読み込み速度は5,187.498MB/sと表示された。

 また、ソフトの移動やインストール、SN770からのソフト起動なども問題なく行なえた。ただし、SN770の1TBモデルはアクセス速度(シーケンシャルリード)が推奨の5,500MB/sに達していない。そのため、動作したとは言え、お勧めはしないでおく。

PlayStation 5のM.2拡張スロットに装着したところ、問題なく認識され、ゲームの移動や起動も行なえた。ただし、シーケンシャルリードが推奨速度に届いていないため、お勧めはしない

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