生き生きと走る背番号8に、胸が熱くなる。オリックス後藤駿太外野手(28)は、外野グラウンドの芝生から勝利のハイタッチを目指し、猛然とベンチへ駆ける。

「ゲームセットの瞬間に、グラウンドで守っていることがモチベーション。そこを大事にしたいと思っている。残り3つのアウトを。最後まで、しっかり守りたいと。もちろん、緊張もする場面で、ハードなポジション。そのやりがいを感じないと、絶対にやっていけない場所だと思う」

気持ちを吐き出した。今季は主に守備固め、代走で出場。基本的に最終回は右翼に「後藤駿太」がいる。今季は自身の役割が明確化されており「僕は何も考えないようにしている。自分のことには無欲というか…。勝つためにどうするか」と、出番が来るまで、入念な準備を怠らない。

10年ドラフト1位でオリックス入団。生え抜き11年目で28歳になった。13年~17年まで5年連続100試合以上に出場し、定位置をつかんだ時期もあった。「僕はプロに入ってから、何年もプレーさせてもらって、何試合も出させてもらっているので、当たり前のことを当たり前に計算できると思われていると思う」。

だからこそ、試合終盤の守備固めは「本当は不安いっぱいですよ。スタメンだったら、なんとか取り返せるシーンもあるけど、僕は、チームにとっても、自分にとっても最後の1つの役割。みんなが打って、守って、白星に最後、つなぐためのすごく重要なポジションと思っています」。

ベンチでは仲間を盛り上げる。ラオウ杉本とは試合開始直前に、ベンチで強く抱き合う。「あれはルーティーン。試合前にグータッチするんですけど、その流れで、取り入れた感じです」。宗とも、試合開始直前にジャンプ1番で“ケツタッチ”。ナインの緊張を解き、試合中は声を張り上げて、雰囲気をつくる。

現在、チームは首位を走る。「(首位は)楽しいですよね。僕は1回、この雰囲気の経験があります」。記憶を思い返すのは、ソフトバンクに僅差で敗れ、2位となった14年だ。「勝ちに貪欲で、負けたくないと強く思って戦う。今も、『絶対に負けたくない』とチーム全員で。みんな不安な顔なんて、全くしてない。常にイケイケで『うらやましいな』と思う自分もいますね」。

主には3番吉田正、4番杉本との交代で、守備固めか代走起用。「今は打ち勝つチーム。あの人たちのおかげで、今の僕の役割がある。本当に、良い関係性。これがチームワーク。僕も、みんなの力に乗っかっていきたい」。

勝つ喜びを、心から味わう。「僕…今、精いっぱいなんです。勝つために守る。その1イニングを大切にする」。まだまだ「後藤駿太」は生きる。あの悔し涙を、絶対に忘れない。【オリックス担当=真柴健】