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Tuesday, May 4, 2021

今ではすっかり大人になりました。──新型ミニ・クロスオーバーJCW試乗記 - GQ JAPAN

ちょっとややこしいアップデート

うーん、これは混乱する。

私は2019年7月にドイツ・ミュンヘンで実施されたミニ・クラブマンJCW/カントリーマンJCWの国際試乗会に参加した。結論を先に申しあげると、このときは背の低いクラブマンだけの試乗で、背が高いカントリーマン(日本名:クロスオーバー)には乗れなかったのだけれど、306psの新エンジンやトルセン式リミテッドスリップデフを搭載するといった変更点はクラブマンとカントリーマンで共通との説明を受けていた。

【主要諸元】全長×全幅×全高=4315×1820×1595mm、ホイールベース2670mm、車両重量1670kg、乗車定5名、エンジン1998cc直列4気筒ガソリンターボ(306ps/5000rpm、450Nm/1750〜4500rpm)、8AT、駆動方式4WD、タイヤサイズ225/50R18、価格609万円(OP含まず)。

© Hiromitsu Yasui

さらにミニ・クロスオーバーJCWは2020年11月にもマイナーチェンジを受けているが、エンジンや駆動系などのスペックは2019年に試乗したものとまったくおなじで、外観やインテリアがアップデートされたとプレスリリースには記されている。

「それだったら2019年の時点で外観もアップデートすればよかったのに……」と思いたくなるが、あらためて調べて見たところ、2019年発表のモデルは2017年発表のものとデザインは共通。つまり、2017年にデビューしたミニ・クロスオーバーJCWは、まず2019年にハードウェアを見直し、続いて今回内外装のアップデートを図ったと理解できるのだ。

まぁ、いずれにしても2019年に改良を受けたクロスオーバーJCWに試乗したことはなかったので、新型クロスオーバーJCWに乗るのはこれが初めてという前提で試乗記をお届けにしたい。

試乗車のアルミホイールはオプションの19インチだった(11万6000円)。

© Hiromitsu Yasui

JCW専用のツイン・エキゾースト・テール・パイプは標準。

© Hiromitsu Yasui

“JCW”とは?

JCWはジョン・クーパー・ワークスの頭文字。もともとF1マシンのコンストラクターだったジョン・クーパーは、ちっぽけなミニをチューニングして1960年代のモンテカルロラリーに挑戦。そのすばしっこさを生かして1964年、1965年、1967年と3度もモンテカルロを制し、ミニ・クーパーの名を不動のものとしたことはご存じのとおりである。

時は流れ、21世紀になるとミニはBMW傘下のブランドとして復活。そのチューニングキットを販売したのが、ジョンの息子マイケルが設立したジョン・クーパー・ワークス社だった。いちおう社外品キットだったとはいえ、これはBMWのお墨付きを得た、いわば共同開発のようなもの。これが予想外の大好評となったことでBMWはジョン・クーパー・ワークス社を買収。以降はキットではなくコンプリートカーとして、というよりはむしろミニのハイパフォーマンス・バージョンとして、ミニのカタログに掲載されるようになった。

ナビゲーションシステムは標準装備。各所にはレッドのアクセントカラー。

© Hiromitsu Yasui

フロントシートは、ヘッドレスト一体型のJCW専用のスポーツタイプ。

© Hiromitsu Yasui

リアシートはセンターアームレスト付き。専用のエアコン吹き出し口も付く。

© Hiromitsu Yasui

リアシートはリクライニング&スライド機構付き。

© Hiromitsu Yasui

そのレシピは、とびきりパワフルなエンジンとスポーティに硬められた足まわりを組み合わせ、ひと目でJCWとわかる内外装のモディファイを行なうというもの。

当然、走りは刺激的なミニのなかでも別格で、BMWにたとえれば通常の「3シリーズ」と「M3」くらいの違いがある。いわばミニのイメージリーダーで、モータースポーツ界に不滅の金字塔を打ち立てたミニ・クーパーの伝統を受け継いでいるのが、現代のミニJCWといって間違いないだろう。

ラゲッジルーム容量は通常時、450リッター。

© Hiromitsu Yasui

リアシートのバックレスト(40:20:40の分割可倒式)をすべてたおすと1390リッターに拡大する。

© Hiromitsu Yasui

リアバンパーに腰掛けるとき、汚れを防ぐゴム製の「ピクニック・ベンチ」は1万8000円のオプション。

© Hiromitsu Yasui

ピクニック・ベンチの使用イメージ。未使用時はラゲッジルームのフロア下に格納出来る。

© Hiromitsu Yasui

扱いやすい高性能

話はぐぐっと戻って、今回は2020年秋に発表された最新のミニ・クロスオーバーJCWに試乗してみた。外観上の違いは、グリル内の赤いラインがぐるりと1周まわっていた形から一直線にあらためられたほか、チンスポイラー周辺のデザインも微妙に変わっている。

いっぽうのリアまわりでは、最新のミニでお馴染みのユニオンジャックをモチーフにしたテールライトが採用された点が目を引く。そしてインテリアでは、こちらも最新のミニでお馴染みのデジタル式メーターパネルの採用が印象的だ。

0-100km/hの加速タイムは5.1秒。

© Hiromitsu Yasui

トランスミッションは8ATのみ。

© Hiromitsu Yasui

市街地を走らせると、記憶のなかにあるミニ・クラブマンJCWよりも乗り心地がしっとりと落ち着いているほか、パシンパシンというショックが足まわりから伝わってくることもない。

そのままワインディングロードに持ち込んだところ、ハンドリングを強引にクイックに仕立てたような印象が消え、落ち着いていて扱い易い特性に仕上げられていることが判明した。

プレスキットを読む限り、最新のクロスオーバーJCWにもトルセン式LSDが装着されているようであるが、スロットルペダルをオン/オフしたときのステアリング特性の変化はごくわずかで、2019年に試乗したミニ・クラブマンJCWよりも扱い易い。いや、ハンドリングだけでなく、乗り心地も含めて、シャシーは全面的に洗練されたように感じる。

ステアリング・ホイールはJCW専用デザイン。

© Hiromitsu Yasui

マイナーチェンジで、メーターはフルデジタルになった。

© Hiromitsu Yasui

理に適った変化

306psのエンジンは文句なしにパワフルでレスポンスも良好。ただし、記憶のなかにある2019年のミニ・クラブマンJCWに比べると、エンジン音は控えめ。その代わり、乾いた抜けのいい音質に変わっていて満足感は高い。音量が小さい点を含め、私の好みだ。

ここまで読み進んでいただいておわかりのとおり、最新のミニ・クロスオーバーJCWは私が知るどのJCWよりも洗練されていた。

駆動方式は4WDのみ。最小回転半径は5.4m。

© Hiromitsu Yasui

走行モードの切り替えスウィッチ(トグルタイプ)はインパネ下部にある。

© Hiromitsu Yasui

BMWとプラットフォームを共用するようになって以来、ミニが急激に大人びていることは私も再三リポートしてきたが、このミニ・クロスオーバーJCWも傾向としてはまったく同様。これをクルマとしての進化と捉えるか、「ミニらしさの喪失」と捉えるかは人それだろうが、私自身は肯定派。

なにしろ、ミニが2001年に復活して以来、もう20年が経っている。ということは、あの頃30歳だったオーナーもいまは50歳。クルマの好みも円熟されたものにシフトしていると捉えるのが自然で、その意味からもミニの変化は理に適ったものだと思う。

文・大谷達也 写真・安井宏充(Weekend.)

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