新型コロナウイルスの感染拡大による観客減などから、ミニシアターの苦境は今年に入っても続いている。そんな折、全国十八館が参加し、盛況となった上映企画が注目を集めている。独立独歩のミニシアターが足並みをそろえることは珍しい。逆境から誕生した新たな試みとは−。 (古谷祥子)
今月上旬、名古屋シネマテーク(名古屋市)。一九七三年のスペイン映画「ミツバチのささやき」(ビクトル・エリセ監督)が終わると、スクリーンに男性三人が映し出された。「それまでアート映画に拒絶されているように感じていたが、この映画は自分を受け入れてくれている気がした」と浜口竜介監督。三宅唱監督、映画研究者の三浦哲哉さんも加わり、作品の魅力などを語り合った。
「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜」と題した一週間連続の催し。連日、六〇年代後半から九〇年代前半にかけての名作を上映後、東京・渋谷のユーロスペースで若手映画監督や俳優らがトークし、全国各地のミニシアター(アートハウス)に中継した。当初は全十八館で同時生中継する予定だったが、緊急事態宣言の影響で開催時間を再調整したため、シネマテークなど一部劇場では録画上映となった。
娯楽性だけではなく、文化的意義を持つ作品も積極的に上映してきたミニシアターは、コロナ禍で経営が悪化。個々での立て直しは厳しく、観客の高齢化などかねての課題も追い打ちをかける。そんな状況を打開しようと、映画配給会社の東風(とうふう)が文化庁の助成金を活用し、企画した。
担当の村田悦子さんは「本来なら各劇場がやることだが、それだけでは流れをつくるのに限界がある」と意図を説明。シネマテークの永吉直之支配人は「本当に面白い作品を見て語ってもらうのは、われわれがやってきた延長線上にあるが、これだけの規模を単体でやるのは難しく、意欲的な取り組み」と歓迎する。
東風は、昨春の緊急事態宣言に伴う映画館の休業期間中、オンライン配信で劇場観賞と同様に収入を分配する「仮設の映画館」を開設した。再度のミニシアター支援に「配給会社も商売は大変だが、一番困るのは劇場がなくなること」と村田さん。昨年十一月の企画時から、短期間で多忙な映画監督らの出演が実現した背景を「アートハウスのために何かしたい気持ちの方が多かったが、こんな状況だからこそ乗ってくれたところもあった」と語る。
ユーロスペースでは期間中、満席状態が続き、第二弾の要望もあったという。シネマテークも初日に四十人近くが訪れ、約一カ月ぶりの大入りとなった。永吉支配人は「今も映画をやっているんだと発信する力になる。劇場として苦しい状況は続くが、忘れられないようにしないといけない」と気持ちを新たにした。
関連キーワード
からの記事と詳細 ( 苦境打開へ!!ミニシアターが連携 渋谷発、トークを全国中継 - 東京新聞 )
https://ift.tt/3dJ0at6
No comments:
Post a Comment