熊本市は2021年も、新型コロナウイルス感染拡大防止と経済の両立という難しいかじ取りが求められる。予測できない豪雨災害などへの備えも不可欠だ。4月には熊本城天守閣内部が一般公開され、観光客増へ期待がかかる。大西一史市長に市政の課題を聞き、今後の方策を探った。(聞き手・潮崎知博、久保田尚之)
-新型コロナウイルスに、どう対応しますか。
「今は第3波の真っただ中で、命や医療を守ることに軸足を置かざるを得ないが、経済対策のアクセルを踏む局面がくる。感染抑制と経済振興という微妙なバランスを上手に取っていくしかない」
-効果的なコロナ対策のため、政令市の権限を強くする必要はありませんか。
「人口が多く、繁華街を抱える政令市に、感染は集中する。新型コロナ特措法を改正して権限を与え、機動的に対応できるようにすべきだ。ただ、現状は知事に権限があり、県との連携が重要。県とは感染リスクレベルを一本化し、常に情報も共有している」
-4月に政令市10年目に入ります。
「災害対応も経験し、都市力、行政力は向上してきた。今後は幅広く社会課題に対応するため、国や県、市町村との『連携』が欠かせない。昨年7月の県南豪雨では延べ6千人の職員を派遣した。地球温暖化対策の実行計画は近隣18市町村で策定中だ。熊本市には、こうした連携を強化するための『ハブ』の役割が求められている」
-近年、全国で想定を超えるような水害が頻発しています。
「線状降水帯の発生を予測するのは困難だ。昨年の台風10号の時のように早めに避難所を開設し、予防的避難を呼び掛けるしかない。統合型ハザードマップも活用し、いつ、どこに、どうやって逃げるのかを分かりやすく示したい」
-市役所本庁舎を巡っては2017年度の調査に続き、昨年の基礎杭[くい]や地下連続壁の調査でも「耐震不足」との結果が出ました。
「2回連続の『耐震不足』という結果は重い。熊本地震の経験から、庁舎は重要な防災拠点と捉えている。防災の専門家や市民などの意見を聞き、どう整備するか総合的に判断する。整備に使える合併推進事業債の活用期限は24年度末。慎重かつスピーディーに対応を進めていきたい」
-4月で熊本地震から5年を迎えます。
「ピーク時に1万2千世帯だった仮設住宅の入居世帯のうち99%が恒久的な住まいに移った。残る約30世帯も再建のめどは立っており、復興は着実に進んだ。引き続き、仮設から災害公営住宅に移った高齢者や単身者が孤立しないよう支援を続けていく」
-新型コロナの影響でインバウンド(訪日外国人客)が激減しています。コロナ時代の観光戦略をどう描きますか。
「熊本の観光はインバウンドに支えられてきたが、しばらくは期待できず国内型への転換が必要になる。まず熊本の人が地元の良さを見つめ直すことが大事。観光資源に磨きをかけ、インバウンドの回復に備えるべきだ」
-21年は熊本市にとってどんな年になりますか。
「3月にJR熊本駅の周辺整備が終わる。4月に駅ビルがオープンし、新しい“熊本の玄関口”が整う。4月には熊本城天守閣の公開も始まり、秋には桜町・花畑地区のオープンスペースも完成する。検討中の『まちなかループバス』を早く実現させ、玄関口の駅から熊本城、桜町バスターミナル、中心市街地に向かう動線をつくり上げたい。コロナ禍でも、着実に前に進んでいる熊本市の強い姿を発信できる1年にする」
からの記事と詳細 ( 「感染抑制と経済、バランス取る」 21年熊本市政展望、大西市長に聞く - 熊本日日新聞 )
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