中世ヨーロッパの物語には「ガウェイン卿と緑の騎士」「Sir Orfeo(サー・オルフェオ)」など、不思議な存在や勇敢な騎士、美しい女性に彩られたものが多く存在します。そんな中世ヨーロッパのファンタジーにおいて、「主人公が生き残るために重要な7つのポイント」について、中世英文学の研究者であり、イギリス・リーズ大学の国際中世会議で会議責任者を務めるMarta Cobb氏が解説しています。
A Survival Guide to Medieval Fairy Tales - Medievalists.net
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Cobb氏は中世ヨーロッパのファンタジーについて、男性と女性の両方が楽しむことができるロマンスが描かれると同時に、男性の主人公が危険な冒険を通じて自らの存在を確立する物語だと指摘。主な中世ヨーロッパの物語には、以下のようなものが含まれます。
・Sir Lanval(ランヴァル)
アーサー王に仕えて武勇や容姿に優れながらも貧困に苦しむ騎士・ランヴァルはある日、小川のそばで豪華なテントに招待されて不思議な美女と恋人になります。美女はランヴァルに多くの金銀を与え、会いたい時に会うことを約束しましたが、条件として「誰にも自分のことを他言しないように」と要求しました。しかし、王妃に言い寄られたランヴァルは、うっかり「恋人の方が王妃より美しい」と言ってしまい、怒った王妃はランヴァルを告発して裁判にかけられることとなります。約束を破られた美女はなかなか現れずランヴァルは追い詰められますが、裁判の日になってようやく美女が現れてランヴァルは解放され、2人は伝説の島であるアヴァロンへと向かいました。
・Sir Orfeo(サー・オルフェオ)
ギリシャ神話に登場するオルフェウスが亡くなった妻を冥府まで追いかけ、連れ戻そうとしたという「冥府下り」のエピソードを元にした物語が「サー・オルフェオ」です。サー・オルフェオでは舞台がイングランドのウィンチェスターに移っており、王であるオルフェオの妻・ヒューロディス女王が妖精に誘拐されるという筋書きになっています。オルフェオは国を執事のスチュワードに託して冒険し、妖精の国の王をハープの演奏で説得して妻を取り返すことに成功。最後は国を託したスチュワードの忠誠心を試し、国王の座に戻りました。
・ガウェイン卿と緑の騎士
衣服や髪、肌、馬まで緑色をした「緑の騎士」がアーサー王の宮廷で行われた宴会に乱入し、アーサー王のおいであるガウェインは挑発にのって緑の騎士の首を切り落とします。しかし、緑の騎士は死なずに首を拾い上げ、1年後に再び「緑の礼拝堂」で会うことを約束させました。緑の礼拝堂を目指して旅に出たガウェインは、道中で泊まった城の妃から誘惑を受けますが、これを強い意志で拒否します。
再び緑の騎士と出会ったガウェインは首をはねられそうになりますが、すんでのところで命を助けられます。実は緑の騎士はガウェインが泊まった城の主であり、妃の誘惑もガウェインの度量を試すことが目的だったとのこと。無事に帰還したガウェインは王をはじめとする人々から祝福を受けることとなりました。
・バースの女房の話
14世紀に著された「カンタベリー物語」に収められている「バースの女房の話」では、女性をレイプして死刑が予定された騎士が、命を助ける条件として「女性が一番好きなものは何か」を探し求めます。騎士は旅の途中で出会ったみにくい老婆から、何でも老婆の望みを聞く代わりに「女性は夫を支配することを望んでいる」という答えを得ます。
見事に命を助けられた騎士でしたが、老婆は騎士に対して自分と結婚することを要求し、騎士は渋々この要求を飲み込みました。結婚式の夜、老婆は自らの姿を変えられることを騎士に明かし、「みにくいが忠実な妻」になるか「美しいが忠実でない妻」になるかの選択肢を与えますが、騎士はその選択を老婆に委ねます。「女性は夫を支配することを望んでいる」ことを理解した騎士の選択を評価し、老婆は「美しくて忠実な妻」となりました。
これらの物語について解説した上で、Cobb氏が指摘する「主人公が生き残るために重要な7つのヒント」がこれ。
◆1:不思議な世界の兆候に気づく
いずれの物語でも超自然的な存在の介入があるため、主人公はこの兆候に気づくことが重要だそうです。超自然的な存在の兆候としては、「全身が緑の騎士が宴に乱入する」といった非常に目立つものもあれば、「船乗りがいないのに動くボート」「豪華なテントの中にいるあまりにも美しい女性」のように比較的目立たないものもあるとのこと。
◆2:眠る場所に気をつける
中世のファンタジーでは、「新しい場所や珍しい場所で眠る時に登場人物が危険にさらされやすい」という特徴があります。たとえば「サー・オルフェオ」ではヒューロディス女王が奇妙な木の下で昼寝をした際に夢を見て、妖精の国の王が彼女を連れて行くと宣言します。オルフェオは兵士にヒューロディス女王を守らせますが、女王は妖精の国へと連れ去られてしまいます。
◆3:物理的な戦いを避ける
物語の主人公は多くが武勇に優れた騎士や大勢の兵を従える王ですが、超自然的な存在に対して武力を使っても役に立ちません。「サー・オルフェオ」では兵士がいたにもかかわらずヒューロディス女王が連れ去られてしまい、「ガウェイン卿と緑の騎士」では首をはねても緑の騎士は死なず、落ちた首を拾い上げて1年後の再会を約束させます。
◆4:「嫌な老婦人」を無視しない
「バースの女房の話」ではみにくい老婆の言葉によって騎士が命を救われるだけでなく、最終的に変身して若く美しい妻になります。また、「ガウェイン卿と緑の騎士」には城主の妻だけでなく、はるかに年上で魅力的でない老婦人も登場しますが、この老婦人こそがガウェインのおばであるモーガンであり、緑の騎士がアーサー王の宴に乱入したのもモーガンの差し金であったことが判明します。このように、物語に登場する「嫌な老婦人」は重要な鍵を握る存在であることが多く、無視してはならないとのこと。
◆5:美しい女性に惑わされない
中世の物語に登場する多くの美しい女性はロマンスを感じさせる存在ですが、「ランヴァル」では女性の約束を破ったことでランヴァルが追放か死の寸前に追いやられ、「ガウェイン卿と緑の騎士」では城主の妃による誘惑がガウェインを惑わせます。このように、美しく神秘的な女性は望ましいものですが、主人公にとっては問題になることもあります。
◆6:超自然的な存在を上回ろうとしない
物語には王や妃といった上位の存在が多く登場しますが、中でも超自然的な存在が最上位のものといえます。「ランヴァル」で恋人となった女性が持つ圧倒的な資産や、「サー・オルフェオ」でたどり着いた妖精の国の豪華な城など、人間の存在では手の届かないものがあると理解することが必要です。
◆7:約束はどれほど無謀なものであっても守る
中世の物語における特徴として、「約束を守ること」が重要な意味を持っている場合が多いとCobb氏は指摘。たとえば「ガウェイン卿と緑の騎士」は緑の騎士との約束を果たすために冒険する物語であり、「バースの女房の話」はたとえ相手がみにくい老婆であっても約束を守って結婚することでハッピーエンドを迎える一方、「ランヴァル」では約束を破ったことにより窮地に追いやられます。
「サー・オルフェオ」では音楽の力で妖精の国の王に対し「何でも望むものを得る」ことを約束させ、誘拐されたヒューロディス女王を取り戻そうとします。妖精の国の王はヒューロディス女王の美しさにオルフェオが見合わないと抗議しますが、オルフェオは「王が約束を守らないのか」と説得し、約束を盾にして女王を連れ帰ることに成功しました。
Cobb氏は中世ヨーロッパの物語に超自然的な存在が介入することについて、物語の魅力を高めてイベントを起こすことに加え、主人公に「さらなるレベルの試練」を与える上で重要だと指摘。超自然的な存在の介入に打ち勝つには武勇に優れているだけでなく、約束を守る強い意志を持ったり忠実であり続けたりする能力が必要であり、話を通じて人々に教訓を与えることができるとCobb氏は述べました。
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