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Tuesday, August 4, 2020

スペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」の帰還は、重要なマイルストーンとして歴史に刻まれた - WIRED.jp

スペースXの有人宇宙船「クルードラゴン」が8月2日(米国時間)、フロリダ沖のメキシコ湾に無事に着水した。宇宙船には米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士ボブ・ベンケンとダグ・ハーリーが搭乗しており、国際宇宙ステーション(ISS)から2カ月ぶりに帰還したのだ。

ふたりは5月末のスペースXの「Demo-2」ミッションにおいて、NASAの宇宙飛行士として初めて民間の宇宙船に搭乗し、軌道に乗ることに成功したことで歴史に名を残した。今回のミッションは、ふたりが搭乗したカプセルが人間の飛行に十分な安全性をもつことをNASAに示すことが目的だったことから、ふたりの帰還によってミッションは成功裏に終了したことになる。

「わたしたちは(ISSへの)ドッキング中にミッションの目的をすべて完了し、乗組員がドラゴンで暮らせるかどうか確認しました」と、NASAの商業乗員輸送プログラムのマネージャーのスティーヴ・スティッチは、7月29日の記者会見で語っている。「宇宙船を地球に帰還させる上で、ちょうどいまが最適なタイミングだったのです」

長い1日の終わり

ベンケンとハーリーはクルードラゴンのカプセルで地球に戻り、NASAとスペースXが事前に選んでいた7カ所の候補のうちフロリダ州ペンサコーラ付近の大西洋にパラシュートで着水した。その後、スペースXの回収船「GO Navigator」によって海上へと引き上げられた。

今回のような有人宇宙船の海上着水による帰還は、実に45年ぶりだった。前回の海上着水による帰還は、1975年に米国のアポロ18号と当時のソヴィエト連邦のソユーズ19号とが、地球周回軌道でドッキングに成功したときのことだった。それ以降は乗員の帰還はすべて地上が選ばれてきたからだ。

Demo-2ミッションでのカプセルの着水は、地球に帰還するまでに20時間近くをカプセルの中で過ごしたベンケンとハーリーにとって、長い1日の終わりを告げるものだった。

宇宙船のカプセルはISSから離脱したあと、自動で数回の短いエンジン燃焼を実施することで、目標地点への着水に最適な軌道に向かった。そのあとベンケンとハーリーは、NASAとスペースXがフロリダの着水地点周辺の天候を監視していた数時間、軌道上を漂いながら過ごしていた。

この時点で、少なくともふたつの着陸地点は快晴の状態である必要があった。すなわち、雨や雷、大きな波、強風がない状態だ。その上で、カプセルは地球へと向かう軌道離脱燃焼を実行する。

降下時のカプセルは約2,000℃に

スペースXのミッションコントロールセンターは、ベンケンとハーリーが着水するわずか1時間前に軌道離脱を最終決定した。悪天候の影響で軌道離脱燃焼を延期することになった場合でもふたりの宇宙飛行士が過ごせるよう、カプセルの中には最大3日間分の空気と水、食料などが確保されていた。

しかし、軌道離脱が最終決定されて帰還が決まると、カプセル内は慌ただしく過酷な状況になった。降下の際にカプセルは大気との摩擦をブレーキ代わりにして、時速17,000マイル(約27,358km)から同350マイル(同約563km)まで一気に速度を落とす。このため摩擦熱によって、カプセルの熱シールドの温度は約1926℃以上にまで上昇する。

カプセルの高度が海面から見て旅客機の巡航高度の半分である3マイル(約4,800km)になると、減速用の小型のドローグパラシュートが補助ブレーキとして開く。そして海面の1マイル(約1.6km)上空まで降りるとメインのパラシュートを開き、カプセルはゆっくりと水面へ下降していく。

SpaceX

PHOTOGRAPH BY BILL INGALLS/NASA

「そして目標地点への着水後、わたしに言わせると“スペースXの海軍”のような人たちが乗員のところに乗り込んでいくわけです」と、スペースXの有人ミッション管理ディレクターのベンジー・リードは記者会見で語っている。スペースXは回収船としてメキシコ湾にGo Navigator、フロリダ東海岸沖に「Go Searcher」を待機させており、それぞれにスペースXとNASAの関係者ら40人以上が乗船していた。

有人宇宙飛行に成功した初の民間宇宙船に

ベンケンとハーリーのふたりは無事にGo Naviatorに乗船すると、まずは徹底した健康診断を受ける。そして着水から4時間以内にヘリコプターでケネディ宇宙センターへと運ばれ、そこから飛行機に乗り換えてテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターにあるNASAの宇宙飛行士の本部へと向かう。

ふたりが搭乗していたカプセルはフロリダ州にあるスペースXの施設で修復され、来春の有人飛行ミッションで再び使用される。「数カ月以内にドラゴンの改修は終わり、再び利用できるようになるはずです」と、スペースXのリードは説明する。「宇宙船のほぼすべてが再利用され、少なくとも5回、場合によってはもっと使えるように設計されています」

ベンケンとハーリーのふたりは今回のミッションによって、新しい宇宙船のテスト飛行経験があるわずか7人の宇宙飛行士の仲間入りを果たした。

NASAが今回のDemo-2ミッションの飛行データを確認したあと、スペースXのクルードラゴンは有人宇宙飛行の認定を受けた米国で5番目の宇宙船であると同時に、初の民間宇宙船になる予定だ。これは大いなる偉業の達成といえるが、NASAの商業乗員輸送プログラムはまだ始まったばかりである。

次のミッションでは野口宇宙飛行士が搭乗

今回のDemo-2ミッションに問題がなければ、スペースXは早ければ9月にも、宇宙飛行士を定期的に宇宙ステーションとの間で往復させることになると予想されている。「帰還後に重要なことは、この飛行から得たすべてのデータを確認することです」と、NASAのスティッチは記者会見で語っている。「わたしたちはデータを念入りに検証し、商用人員輸送の運用を始める準備ができているかどうか精査する予定です」

SpaceX

PHOTOGRAPH BY LEWIS, MARIE G. (KSC-PXC00)/NASA TV

その第1弾となるスペースX初の商用人員輸送ミッション「Crew-1」は、4人の宇宙飛行士をISSへと運ぶことになる。搭乗するのは日本の野口聡一のほか、NASAのマイケル・ホプキンスとヴィクター・グローヴァー、シャノン・ウォーカーの計4人の宇宙飛行士だ。

ベンケンとハーリーのミッションでのISS滞在期間は、クルードラゴンの太陽光発電パネルの信頼性が懸念されていたことから最長4カ月という制約があった。次回のミッションでは性能を高めたパネルを宇宙船に搭載することで、宇宙飛行士たちは約6カ月を軌道上で過ごせることになるという。

スペースXが証明したこと

だが、将来的に宇宙飛行士を宇宙へと送り出す民間企業は、スペースXだけではない。すでにボーイングも、NASAの商業乗員輸送プログラム用のカプセルの開発に取り組んでいる。

ただし、ボーイングは業績が低迷して窮地に追い込まれており、さまざまな難題に直面している。同社は昨年末のミッションでソフトウェアの問題に直面し、機体が正しい軌道上で宇宙ステーションにドッキングできるようにエンジンを燃焼させることができなかった。このため、ISSへの無人試験飛行を中止せざるを得なかったのだ。カプセルは無傷で地球に戻ってきたが、ボーイングは有人の試験飛行を実施する前に、再び無人飛行のデモを予定している。

ベンケンとハーリーの帰還は、NASAの有人宇宙探査プログラムの商用化における重要なマイルストーンである。かつて有人宇宙飛行は世界で最も強い力をもつ国家の独壇場だったが、いまやスペースXが民間企業として人を宇宙に送り込み、帰還させることが可能であると証明したのだ。

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