※本記事は、2020年7月25日刊行の定期誌『MarkeZine』55号に掲載したものです。
ウェビナー需要は続くのか?
国内においてはこれまで、ウェビナーに対する注目度はお世辞にも高いとは言えなかった。しかし緊急事態宣言後、在宅・リモートワークが増え、世の中のWebコミュニケーションに対するリテラシーが急激に向上したことも相まって、その需要は一気に高まることになる。あらゆるイベント、セミナーが軒並み中止に追い込まれ、代案の企画実行を迫られたマーケティング担当者は、成功するかどうか疑念を抱きながらもそれらイベント、セミナーのオンライン実施に踏み切った。
結果、予想を遥かに上回る登録・視聴者数を獲得した企業も多いのではないか。それにより、ウェビナーを始めとしたオンラインイベントの需要の高まりが証明され、それらの成功事例を見て我も我もとあらゆる企業が実施に踏み込んだ。読者もお気づきかと思うが、ここ2〜3ヵ月に凄まじい数のウェビナーが開催されているにも関わらず、どのウェビナーもあっという間に100人以上の参加者を集めていることが多い。
「何を今さら、そのブームはもう終息しつつある。需要は落ち込むはず」と思う読者も多いだろう。その通りだと思う。マーケティング担当者にとって、リード獲得を目的としたとき、いわゆる“かきいれ時”は確かに緊急事態宣言下の4月〜5月末にかけてだった。しかし、この数ヵ月の大きなムーブメントにより、ビジネスパーソンに「ウェビナーに参加する」という考え方が選択肢として強く根付いたことで、直近ほどの需要は見込めないものの、少なくとも数年は定常的なマーケティング施策として必要十分に機能するくらいには一定の成果を生み出す手段となると確信している。
さて、前置きが長くなってしまったが、これからのマーケティング施策のスタンダードになるであろうウェビナーを自社で企画実行するために抑えておくべきポイントについて、筆者の経験をもとに書き連ねていく。なお、今回は大型のオンラインイベントのようなものではなく、参加者数〜100名程度のウェビナー向けであることを前提としたい。
「コンテンツ設計」は目的を明確にするところから
コンテンツ設計は最も重要で、時間をかけたい部分である。ポイントは大きく3つある。1つ目は「マーケティング施策としての主目的を明確にする」こと。ウェビナーを通して達成したい目的は何かを決めておくことが重要である。たとえば、見込み顧客の獲得(新規リード獲得)、ハウスリストの育成(ナーチャリング)、既存顧客育成(エンゲージメント向上)、既存顧客向け案件拡大(アップセル)など、目的で整理するとわかりやすい。
2つめは「想像ではなく具体的な対象を一人決める」こと。多くの方は目的に応じて仮想のペルソナを定め、それに合わせたコンテンツ設計を実施していることと思う。しかし私の経験上、仮想ではなく実在する人物をペルソナとして置くことで、驚くほどスムーズにコンテンツが決まる。その人物に響く内容は何かということだけを考えることが重要だ。この考え方はともすればその人物の対岸にいる人にはまったく響かず、機会損失にもつながりかねないという印象もあるが、この方法の最大のメリットは、初めに定めた目的に応じて、顧客のフェーズに対応したコンテンツを設計しやすくなることにある。
実在する人物を選定するにあたって、私の場合、(宣伝っぽくなってしまうが)、Sansanを用いて、過去に自分が名刺交換をした方から目ぼしい方をチョイスし、直接連絡を取ってしまうことが多い。手前味噌ではあるが、Sansanはこのようなとき本当に便利である。あるいは、皆さまの会社の営業部隊にヒアリングすることも良い方法だろう。営業中の見込み顧客の情報や、既存顧客の情報など、実際に対面で会話をしている営業メンバーがその人のことをよく理解しているはずだ。
3つめは「ウェビナーのゴールがわかるタイトル、概要を作る」こと。これまでのステップを経れば、定めた対象者がこのウェビナーに参加するとこうなる(こう変わる)ということが簡単に想像できるようになっていると思う。そのため、概要には「このウェビナーのゴール」をその対象者に向けて説明するつもりで考えればあっという間に片付く。タイトルはその概要をさらにサマライズするイメージで考えると良い。筆者は概要とタイトルを大体10分で決める。タイトルと概要について、「数字を入れたほうが良い」や「字数は○○文字が目に付きやすい」などよく言われているが、そのような小手先のことに引っ張られずに、伝えたい人に響く内容かどうかを考えることのほうが100倍大事である。
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