今年4月、アメリカ・ミネソタ州で警官によって「黒人」男性が殺害された。その映像はテレビやSNSで世界中に拡散され、アメリカ各地で差別に抗議するデモが行われるとともに、暴動も起きた。こうした反差別デモは「黒人の命は大事だ(Black Lives Matter)」の標語とともに世界各地に広まっている。 【写真】「日本のどこがダメなのか?」に対する中国ネット民の驚きの回答 そうした中、「人種」による差別(レイシズム)があってはならないということ自体は多くの人が共有しつつも、「人種」の違いをどう乗り越えるべきか、あるいは「人種」間の平等がいかに可能かをめぐっては、議論が錯綜しているように思われる。「人種」が違っても差別をしないよう心がけ、差別を禁止する法律を整備すればレイシズムは徐々になくなっていくのだろうか。 このように問うなかで、しばしば忘れられている前提がある。それは、遺伝学的見地からは、「人種」は存在しないという指摘がなされていることである。しかし、そう言われても、感覚的には納得できない人は非常に多いはずである。また、「人種はない」という表明は、現在も明白に存在するレイシズムを隠蔽しているようにも思われかねない。むしろ、単純に「人種はある」と考える方がふつうなのではないだろうか。 本記事では、「人種はある」という立場と「人種はない」という立場を対照させながら、「人種」とレイシズムの関わりを解説する。
アメリカ社会と「人種」のリアリティ
アメリカにおけるエスニシティやレイシズムの歴史については、上杉忍『アメリカ黒人の歴史 - 奴隷貿易からオバマ大統領まで』、貴堂嘉之『移民国家アメリカの歴史』、渡辺靖『白人ナショナリズム:アメリカを揺るがす「文化的反動」』、南川文里『アメリカ多文化社会論』など、一般向けに書かれた優れた解説書がある。 アメリカに住んだことがある人ならば、誰もが「人種」区分は日常であることを実感するはずである。そうした区分は、アメリカの国勢調査にも表れている。その質問項目はウェブ公開されている。 2020年版の質問項目を見ると、質問番号8で世帯構成員について「ヒスパニック、ラティーノ、スペイン系の出自ですか」と尋ねている。続いて質問番号9で「人種は何ですか」と尋ねており、「白人」、「黒人ないしはアフリカン・アメリカン」、「アメリカン・インディアンないしはアラスカ・ネイティヴ」、さらに「中国系」や「日系」などの選択肢が並ぶ。 このように、米国では人びとが何となく「人種」区分をしているというだけでなく、国勢調査によって公式に「人種」が分類されており、「人種」に客観的なリアリティが感じられる。 こうした統計データを用い、社会学や人口学の論文でも「人種」概念が当たり前のように用いられている。ただし、これが社会的構築物であることは認識されている。 一方で、米国の社会学や人口学における「人種」概念の使用については、高名な人口学者であるチャールズ・ハーシュマンによって疑義が唱えられている(Charles Hirschman, 2014, “Origins and Demise of the Concept of Race”, Population and Development Review, Vol. 30, No. 3, pp. 385-415.)。彼の主張は、概ね以下の通りである。 人種概念はこの4世紀ほどの間に形成されたものであり、19世紀後半から20世紀前半までは「イデオロギー的」であり、20世紀後半から科学的知識との関わりが深くなっていった。科学的知識はしかし、20世紀前半までに形成された「人種」カテゴリーを再生産していき、人びとの日常的認識だけでなく、(国勢調査を含む)公共政策や学術研究においてもレイシズムが生き延びることになった。 現在でも「人種」を実体化する言説はメディアにも学術界にも見られるが、「人種」にはレイシズム以外にその根拠となる概念的基盤がない。社会的カテゴリーとしての「人種」には、論理的基盤がない。だから、「人種」概念は用いるべきではない。代わりに、エスニシティ概念を用いるべきである。 以上がハーシュマンの主張である。米国の社会学や人口学だけでなく、医学においても彼のような立場は主流ではない。しかし、遺伝学を中心に「人種」概念の科学的根拠は否定されており、ハーシュマンの議論は補強することができる。
"重要な" - Google ニュース
June 20, 2020 at 05:01AM
https://ift.tt/2Ncg5l4
「人種は存在しない、あるのはレイシズムだ」という重要な考え方(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
"重要な" - Google ニュース
https://ift.tt/37j3R1J
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
No comments:
Post a Comment