<何年も前に米大学の学生新聞に掲載された話が、全米で黒人差別反対デモが吹き荒れる今になって議論を読んでいる訳>
ベートーベンは黒人だった?──以前、あるウェブサイトに投稿された仮説が注目を集め、議論になっている。
2015年、米コンコーディア大学の学生新聞「ザ・コンコーディアン」のウェブサイトに、作曲家ベートーベンは黒人だったと示唆する記事が投稿された。私たちが彼について知っていることは全て、嘘で塗り固められた虚構なのかもしれないと主張している。
ルードウィヒ・ファン・ベートーベンについて分かっていることは、1770年にドイツのボンで生まれ、1792年にオーストリアのウィーンに移住したこと、そして家族のルーツがヨーロッパ北部のフランドル地方にあることだ。
ザ・コンコーディアンへの投稿は、彼の母親であるマリア・マグダレーナ・ケフェリヒがムーア人(ヨーロッパに暮らすイスラム教徒やアフリカ系の人々)の子孫だった可能性が高いと示唆している。彼女が生まれたとされる地域が、ムーア人の直接の支配下にあったことがその理由だ。
投稿者はさらにベートーベンの身体的特徴を引き合いに出し、鉛筆で描かれたスケッチではベートーベンの肌が「とても濃い色で」描かれており、「黒人説」を裏づけていると説明。ベートーベンの肖像画を見ると白人に見えるが、これらの肖像画はどれもベートーベンのイメージを絵にしたものだから当てにはならないと主張した。
「ベートーベンの人種に関する真実がわかったからといって、彼の音楽の素晴らしさが変わる訳ではない」と、筆者は書く。「だがヨーロッパの植民地主義がどれだけ今の人種差別に影響を及ぼしているかを知ることには意義があると考えた」
当時のウィーンには黒人がいたが
「歴史上の偉大な人物はなぜ白人ばかりなのか。その不自然さに思い至ると、この問題について話すことがいかに重要かがわかる。もうそろそろ、全ての偉業を白人だけのものにするのはやめるべきだ。歴史はあまりに長い間、白人に独占されてきた」
だが、ベートーベンが黒人だったという説には上に書いた以上に大した根拠はない。サンノゼ州立大学のアイラ・F・ブリリアントセンター(ベートーベン研究施設)は、ベートーベン黒人説は「ベートーベン家の系譜研究」ではなく、「ベートーベンの祖先のひとりに婚外子がいたという仮説」を基にしたものだと指摘する。
同センターはさらに、こう説明している。「留意すべき重要な点は、ベートーベンが生きている間に、彼を黒人またはムーア人と呼んだ人は一人もいないことだ。当時のウィーン市民はムーア人についても、ベートーベンと共演した著名バイオリニストのジョージ・ブリッジタワーのようなムラート(白人と黒人の混血)についても、よく知っていた」
それでは今、「ザ・コンコーディアン」が多くのツイッターユーザーに拡散されているのはなぜか。
<参考記事>「英王室はそれでも黒人プリンセスを認めない」
<参考記事>女性の美を競う世界大会5大会すべてで黒人女性が優勝する時代に
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June 19, 2020 at 02:55PM
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「ベートーベン黒人説」の真偽より大事なこと - Newsweekjapan
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