新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより多くの人々が勤務形態の変更を余儀なくされており、柔軟な働き方が可能な職に就いている人の中にはリモートワークを始めている人もいます。ところが、リモートワークへの移行に伴ってストレスを感じる人も多いそうで、「リモートワークは仕事がもたらす重要なメリットを損ねてしまう」と、イギリスのセント・アンドルーズ大学で哲学を研究するデリン・トーマス氏が解説しています。
Why working remotely feels so jarring – according to philosophy
https://theconversation.com/why-working-remotely-feels-so-jarring-according-to-philosophy-135127
COVID-19の流行によって世界中の雇用状況が大きく変化しており、トーマス氏は「ほんの数カ月前まで私たちはロボットが人間の職を時代遅れにするのかどうかを疑問に思っていましたが、今の課題は仕事上の関係の性質が根本的に変わったことです」と指摘。多くの人々は仕事上の関係が変わったことを認識しており、COVID-19のパンデミックは仕事が果たす社会的機能について重要なものを示したと述べています。
哲学者のAnca Gheaus氏とLisa Herzog氏は、仕事は単にお金を稼ぐ手段というだけではなく、社会貢献・社会的認知・コミュニティに属する経験といったものを得る上で重要だと主張しています。たとえば大学院生向けのセミナーを実施する場合、自身がほかのメンバーに認められ、評価される方法で何らかの貢献を行う機会があるとトーマス氏は指摘しました。
ほとんどの平均的な成人が1週間に40時間以上、起きている時間の3分の1近くも仕事をしている世界において、仕事上の関係が人々の社会生活の大部分を占めていることは珍しくありません。同僚とは単に同じ時間を過ごすだけでなく、協力して計画を立てて意志決定を行い、友人や家族とはまた異なった種類の関係を結びます。中には、友人や家族との関係よりも、仕事仲間との関係がより濃密だという人もいます。
哲学者のAndrea Veltman氏は、意義のある仕事が人々の明確な社会的ニーズを満たすだけでなく、知性や自律性といった人間の多様な能力を構築し、人間的な成長を促す役に立つと指摘。仕事を通じて発達させた能力を行使することで、さらに人は他者からの承認を受けたり、社会貢献をしたり、自尊心を満たしたり、自己表現をしたりといった多くの社会的ニーズを満たすことができます。これらの社会的行為は全て、心理的健康の基盤になっているとのこと。
また、意義のある仕事は自分の人生の一部分として見なすことが可能であり、自分にとって重要な人々の人生とつながりを持つ上でも役立ちます。つまり、意義のある仕事は自分の人生にまとまりを持たせ、より大きな存在と統合する上でも役立つとトーマス氏は述べています。
人間は本質的に社会的な生き物であり、仕事は社会的な欲求を満たす上で重要な役割を果たしています。社会的利益を得る仕事は必ずしも肉体の行使を必要としないものの、COVID-19のパンデミックによって在宅勤務を余儀なくされた人々の多くは、仕事から社会的利益を得ることが困難になっているとのこと。
仕事から社会的利益を得られなくなった理由の1つとして、トーマス氏は「職場のコラボレーションが電子メールを介した個々の意志決定の連鎖になってしまったこと」を挙げています。必要事項だけを伝達するやり取りの中では、自分の仕事が他者にとってどれほど重要であるのかを認識することが難しくなっているとのこと。また、現実に顔を突き合わせた会議とは違い、ビデオ会議の後では参加者が個人的にアイデアを話し合ったり、仕事の成果を祝福したりする機会を持つことも難しくなっています。
トーマス氏は、ビデオ通話では同僚と話すことはできるものの、プライベートの話題で笑ったり何かちょっとしたことで感謝したりといった、現実に顔を突き合わせた場合に可能な多くのやり取りが失われてしまうと指摘。インターネットがあれば人々は仕事に必要なつながりが保てるものの、このやり方では仕事から十分な社会的利益を得られません。そのため、COVID-19のパンデミックを経験した社会はリモートワークを一気に押し進めるのではなく、技術の進歩に逆らって、何らかの作業を古い方法のまま維持し続ける可能性があるとトーマス氏は述べました。
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