Z世代を中心とした若者の間で、“Y2K”ファッションが人気を呼んでいます。Y2Kとは「2000年頃」を意味する言葉。肌見せ、厚底ブーツ、へそ出しルック、アームカバーなど様々なアイテムや着こなしが、この時代に流行しました。そのトレンドを最も特徴づけているアイテムの一つがミニスカートと言われています。杉野学園
ミニスカートがファッション界に初めて登場したのは1960年代初め頃のことでした。ロンドンの若い女性たちがはいていたミニ丈のスカートに注目したイギリスのファッションデザイナー、マリー・クワント(1930~2023年)が商品化し、一大ブームを巻き起こしました。そして、65年にフランスのファッションデザイナー、アンドレ・クレージュ(1923~2016年)が、パリ・オートクチュール・コレクションでミニ丈のドレスを発表したことで、その流行は決定的なものになりました。
従来は、パリのモードがファッションの潮流を支配していましたが、ミニスカートは、ロンドンのストリートファッションが起源で世界に広がるという、いわば逆転現象が発生したわけです。
今でこそミニスカートは女性らしさをアピールする衣服として捉えられがちですが、60年代は、中性的でボーイッシュなものとして受け止められました。ミニスカートは、長い丈によって動きに制限を受けることなく、自分の体を自由に動かすことのできる「活動性の象徴」だったのです。
日本でもミニスカートの流行は1960年代半ばには訪れていましたが、まだ一部のファッションに敏感な人だけのものでした。67年、ファッションアイコンとして知られるモデルのレズリー・ホーンビー(愛称ツイッギー)が来日したのを契機に、ミニスカートは一挙に大ブレイクを果たしました。
本展に並ぶ約30点はすべて、ミニスカートブームのただ中だった当時、ファッションデザイナー・杉野芳子(1892~1978年)がデザインし、杉野が経営する服飾専門学校・ドレスメーカー女学院の学生が制作したもの。円の繰り返しがモチーフになっている幾何学的な構成の作品あり、大きなボタンに紫の革を通し、アクセントにしている作品ありと多様性に富んだ表現が楽しめます。
日本の女性たちがいきなり大胆に脚を露出したわけではなかったことは、展示されたミニスカートの丈が意外と長いことからも分かります。同博物館の杉村祐貴子学芸員は「1967年の時点では、どんなに短くとも膝上5センチのスカートしかはいていません。現在、イメージするミニスカートよりもずいぶん丈が長い印象です。膝を見せることに対する当時の日本人女性の恥じらいがうかがえて興味深いです」と語ります。
Y2Kファッションを楽しむ、令和の若い女性たち。ただ、杉村学芸員によると、60年代に日本に上陸して、その後、何度も流行してきたファッションであることを知っている女性はほとんどいないそうです。本展を通じてミニスカートの起源を知ることで、もっと自身の装いを楽しめるヒントが得られるかもしれません。展示は7月31日まで。(読売新聞メディア局 市原尚士)
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