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Monday, May 20, 2024

【Hothotレビュー】 4型ディスプレイなど機能満載!Core Ultra 9を搭載した最新ミニPC「AtomMan X7 Ti」 - PC Watch

AtomMan X7 Ti

 最近はミニPCが話題になっていることが多いが、その多くがAMDの「Ryzen」シリーズか、Intelの低消費電力CPU「Intel N100」を搭載するローエンドモデルだ。Ryzenシリーズの直接のライバルとなるIntelの「Core」シリーズを搭載するミニPCは製品数も少なく、存在感が薄いように感じる。

 それもそのはず、同じグレードのCoreシリーズとRyzenシリーズを搭載するミニPC同士で比べると、Ryzenシリーズを搭載するミニPCの方が明らかに安い。しかも中~上位モデル同士の対決では、性能面でRyzenシリーズに優位性があることを考えるとやむなしではあるが、こうした状況に一石を投じる可能性を秘めるミニPCが発表された。

 今回紹介するMINISFORUMの「AtomMan X7 Ti」は、CPUにはIntelの最新アーキテクチャを採用する「Core Ultra 9 185H」を搭載するほか、コンパクトなミニPCらしい筐体に4型のタッチ対応ディスプレイ、指紋認証機能、顔認証機能に対応したWebカメラ機能など、さまざまな機能をてんこ盛りに詰め込んだ1台だ。今回はこの最新ミニPCの魅力に迫っていこう。

 なお、直販価格はベアボーンで11万4,380円、32GB+1TBで14万6,980円。5月27日まで公式直販で使える4,000円オフクーポン(PWX7TI4」をいただいたので、購入の際は適用されたい。

Core Ultra 9 185Hでは3種類のCPUコアを搭載する

 AtomMan X7 Tiは、前述の通りCore Ultra 9 185Hを搭載するミニPCである。これはコードネーム「Meteor Lake」と呼ばれていた最新世代のノートPC用CPUで、Hyper-Threading対応の高性能コア(Pコア)を6基、高効率コア(Eコア)を8基搭載するほか、低消費電力高効率コア(LP-Eコア)を2基搭載する。合わせて16コア22スレッドに対応した、高性能なハイエンドCPUだ。

メーカー MINISFORUM
製品名 AtomMan X7 Ti
OS Windows 11
CPU(最大動作クロック) Core Ultra 9 185H(16コア22スレッド)
搭載メモリ
(空きスロット、最大)
DDR5 SODIMM PC5-44800 16GB×2
(なし、64GB)
ストレージ(インターフェイス) 1TB(PCI Express 4.0)
拡張ベイ PCI Express 4.0対応M.2スロット×1
通信機能 IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax/be、Bluetooth v5.4
主なインターフェイス 5Gigabit Ethernet×2、DisplayPort×1、HDMI×1、USB4×2、USB 3.1×2、USB 3.0×1、USB 2.0×1、OCuLink×1
本体サイズ 145×145×48.6mm
直販価格 ベアボーン:11万4,380円、32GB+1TB:14万6,980円

 12/13世代のCoreシリーズでは、上記のPコアとEコアという2種類のコアを搭載していた。Meteor Lakeではより省電力なLP-Eコアを追加しており、作業時の負荷状況によってこれら3種類のコアを使い分け、性能と消費電力の削減を両立するという。

 また内蔵GPUも世代が進んで性能が大きく向上しており、主にこの部分で大きく水をあけられていたAMDのライバルCPUとの比較において、重要な役割を担うことは間違いない。

 こうした従来型のCPU改良に加え、NPU(Neural Processing Unit)を追加することで、昨今話題のAIに関する演算を高速に行なえるようにしている。このほかMeteor Lakeに関する詳しい情報は、過去記事)などを参照して欲しい。

Core Ultra 9 185Hは最大5.1GHzで動作し、16コア22スレッドに対応する

 AtomMan X7 Tiでまず目に付くのは、本体の正面に搭載する4型の液晶ディスプレイだ。一般的なミニPCでは天板に該当する場所に組み込まれているのだが、この液晶ディスプレイやWebカメラの使いやすさ、後述するエアフローを考えると、液晶ディスプレイを搭載する面をユーザーに向けて利用する「正面」と考える方がよいだろう。

4型の液晶ディスプレイには、さまざまな情報が表示される
表示項目を変更して、CPUの情報を大きめに表示するなどのカスタマイズに対応

 また背面(一般的なミニPCでは底面にあたる部分)には大きな吸気口が開いている。この面を下にして設置すると隙間が狭くて吸気が十分ではない印象だ。液晶ディスプレイ部分を正面にして設置するための専用スタンドには、この吸気穴の位置に合わせて大きめな通気口が開いていることを考えると、いわゆる平置きは避けた方が良さそうだ。

付属のスタンドだ。スタンドの中央には大きめの穴がある
スタンドの突起とAtomMan X7 Tiの背面にある穴を合わせて吊り下げるような形で設置する

 液晶ディスプレイには日時や天気予報のほか、CPUやGPU、メモリやSSDの使用率や温度などが表示され、PCの状況を一目で確認できる。またタッチパネルに対応しており、それらの項目の状況をより細かく表示したり、音量調節や液晶ディスプレイ表示の明るさなどをタッチ操作で変更できる。

液晶ディスプレイはタッチ操作にも対応する

 また正面には、顔認証によるサインインに対応したWebカメラ機能を搭載しており、カメラに顔を向けるだけでPCを起動したり、ロックされたPCのロックを解除できる。うっかり周囲の様子が映ってしまわないよう、Webカメラを物理的にマスクして利用できなくするカバーも付いている。

中央がWebカメラ、両脇にあるのがマイク
上部のレバーを左に移動すると、カメラのレンズが赤い丸で覆われてWebカメラが無効化される

 電源ボタンは天板に装備し、ここにはSDカードスロットを装備する。左側面には映像出力端子やACアダプタからの電源供給コネクタや5Gbps対応の有線LANポート、USB4ポートのほか、「OCuLink」も搭載している。OCuLinkは、自作PC向けのビデオカードを接続して利用するためのポートで、同社の「EliteMini UM780 XTX」など高性能なミニPCで搭載例がある。

 公式ではOCuLinkに対応したドッキングステーション「DEG1」も用意している。単品価格は1万3,580円。X7 Tiとセット購入の場合、ベアボーンは12万1,380円、メモリ32GB+1TB SSDモデルで15万3,980円となる。

左側面には有線LAN端子や各種ディスプレイ出力端子、電源端子などを装備する
右側面にはUSB4ポートやUSB 3.1ポートを装備

テスト内容によって勝者が変わるデッドヒート

 電源を入れてみよう。最初にフワーッとファンの回転数が上がったあと、すぐに静かな状態に戻る。この辺の制御はほかのミニPCと同様で、Webブラウズや音楽再生、動画配信サービスなど軽作業ではファンの回転数が上がることはなく、静かに利用できた。

 軽作業なのでおそらくはEコアやLP-Eコアが主に利用されている状態だと思われるが、Windows 11の挙動はスムーズだし、アプリの起動やウィンドウの移動などはサクサクと快適だ。

 液晶ディスプレイには、CPUや内蔵GPU、メモリ、SSDの利用状況がリアルタイムに表示される。ベンチマーク中など負荷の高い状況でCPU温度やメモリの利用状況などをモニタリングアプリを使わずに確認できるのは、なかなか便利だ。

 次に、気になる性能をいくつかのベンチマークテストで検証していこう。比較対象は同じMINISFORUMの「Venus UM790 Pro」だ。CPUはAMDの「Ryzen 9 7940HS」、AtomMan X7 Tiが搭載するCore Ultra 9 185Hと比べるとCPUの位置づけやブランドが近く、真っ正面から戦うライバルと言ってよい。

 またAtomMan X7 Tiでは、「静音」、「バランス」、「パフォーマンス」という3つの動作モードを選択できる。いくつかのテストはバランスとパフォーマンスの両方で行なってみた。

Ryzen 9 7940HSを搭載するMINISFORUMのVenus UM790 Pro

 一般的によく利用されるアプリの使用感を計測できる「PCMark 10」の結果を整理したのが、下のグラフだ。いずれもScoreが大きいほど性能が高いことを示す。そしてこのテストでは、AtomMan X7 TiのパフォーマンスモードでもVenus UM790 Proに敵わないと言う結果となった。

 もちろん過去に検証した13世代Coreシリーズを搭載したミニPCと比べれば、AtomMan X7 TiのScoreは飛躍的と言っていいほど向上している。しかしそれでもなお、直接のライバルとなるAMDの高性能CPU搭載ミニPCと比較すると、一歩及ばない部分もあるようだ。

PCMark 10

 3Dグラフィックス性能をScoreで示す「3DMark」の結果を見ると、ちょっと面白い状況になった。主にDirect X11を利用する「Fire Strike」や、内蔵GPUを利用するPC向けに負荷の低いテストを行なう「Night Raid」ではPCMark 10と同様Venus UM790 Proが優位に立つが、主にDirect X12を利用する「Time Spy」テストではAtomMan X7 Tiがやや有利になっている。

3DMark

 実際のPCゲームを利用したベンチマークテストも試してみよう。AtomMan X7 Tiのバランスモードとパフォーマンスモードは、3DMarkのScoreを見る限りほとんど変わらなかったため、以降はバランスモードのみで計測している。

 まず1つ目は「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」で解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)、グラフィックス設定は「高品質(デスクトップPC)」と「標準品質(デスクトップPC)」の2通りで計測している。WQHD(2,560×1,440ドット)や4K(3,840×2,160ドット)では両者ともにプレイに適したスコアにはならなかっため、今回は上記の条件で比較した。

ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク

 高品質ではほぼ同じスコアながら、より負荷の低い標準品質ではAtomMan X7 Tiが優位に立っている。レポートに記載されたフレームレートを見ると、高品質ではどちらも平均が約40FPS、最低フレームレートは25FPSだった。

 標準品質ではAtomMan X7 Tiが約54FPSで、最低が34。Venus UM790 Proは平均が約45で、最低は26だった。どちらも表示がややぎこちなくなる部分はあり、こうしたことがフレームレートに反映されていることが分かる。

 もう1つ負荷が低めのPCゲームとして「レインボーシックス シージ」のベンチマークテストモードを検証した。解像度は先ほどと同じくフルHD、グラフィックス設定は「最高」と「中」だ。こちらのテストで計測した平均FPSを見ると、どちらもVenus UM790 Proが優位に立っている。

レインボーシックス シージ

 こうしたテスト結果を見ると、内蔵GPUの性能が13世代のCoreシリーズから飛躍的に向上したことは間違いない。実際、一部のテストではAMD製CPU搭載ミニPCに打ち勝つ場面もある。しかしプレイするゲームや設定によっては、大きな違いが見られなかったり、逆に負けてしまうこともあるようだった。

 ちなみにRyzen 9 7940HSの内蔵GPUでは、フレームレート生成機能が利用できる。この機能を有効にすると、さきほどのファイナルファンタジーXIV:黄金のレガシー ベンチマークでは20~30ほどFPSが向上した。こうしたことまで考慮する場合は、まだRyzen 9 7940HS搭載のミニPCのほうが強そうだ。

 CPUの純粋な処理性能を比較するため、TMPGEnc Video Mastering Works 7による動画エンコード速度を比較したのが下のグラフだ。より短い時間で処理できた方が性能が高い。H.264/AVC形式へのエンコードでは互角、より複雑で高度なH.265/HEVC形式へのエンコードではVenus UM790 Proが有利という結果となった

TMPGEnc Video Mastering Works 7動画エンコード

内部へのアクセスはかなり繊細な作業が必要

 最後に内部の様子を見てみよう。背面のパネルを外すにはまずゴム足を剥がし、その下にある4本の固定用ネジを外す。その上で背面パネルを外す必要があるのだが、背面パネルはかなりしっかりとツメで固定されていた。フレームと背面パネルの隙間に薄いプラスチックのカードを差し入れて、このツメを慎重に外していく必要がある。

ゴム足を外すと、背面のパネルを止めているネジが見えるのでこれを外す
背面パネルを外したところ

 またこの背面パネルにはUSBポートを利用するための短いフラットケーブルが接続されている。力任せに引っ張るとこのケーブルが外れてしまうため、ここも丁寧に作業していきたい。

 背面パネルを外すと、かなり大型のヒートシンクと冷却ファンが見えるが、この段階でもメモリスロットやM.2スロットにはアクセスできない。ヒートシンクにファンを固定している合計12本の小さなネジを外す必要がある。

 この小さなネジを外すためには、細い精密ドライバが必要だ。また非常に小さなネジなので、PC内部に落とさないようこちらも慎重に作業する必要がある。内部にアクセスするためにここまで繊細な作業を要求されるモデルは、最近のミニPCとしては珍しい。またこのファンとマザーボードも電源ケーブルで接続されているので、これも断線しないように作業しよう。

ファンを固定している12本のネジを外すと、熱伝導シートで保護されたメモリスロット(上)と大型のヒートシンクを乗せたSSDが見える
メモリとSSDを外すとこんな感じだ

 ミニPCらしい小さな筐体ながら、3本のヒートパイプと目の細かいアルミ製ヒートシンクを組み合わせたCPUクーラーが目を引く。またメモリにはメモリスロットまで被うサイズの大きめな熱伝導シートが貼られているほか、M.2 SSDには大きめな金属ブロックのヒートシンクが乗せられており、これらのパーツを背面から給気した外気でしっかり冷却するという仕組みだ。

CPUの上には、3本のヒートパイプとアルミフィンを組み合わせたヒートシンクが載っている

 こうした豪華な冷却機構の性能を検証するため、動画配信サイトの動画を1時間再生した時の平均的な温度、PCゲームの長時間プレイを想定して3DMarkの「Stress Test(Time Spy)」(約25分間)を実行中の最大温度、CPUコアに高い負荷をかけ続けるCinebench R23を実行中(約10分間)した時の最大温度を計測し、下のグラフにまとめた。

温度

 Cinebench時の最高温度は93℃まで上がったが、これは最初の数秒、Pコアが5GHz前後で動作している時の温度だ。以降は3.6GHzまで低下し、CPU温度も80℃前後で安定していた。13世代Coreシリーズを搭載するミニPCでは、Cinebench時に100℃に達することも珍しくはなかったことを考えると、AtomMan X7 Tiに搭載された冷却システムの冷却効率の高さがうかがえる結果となった。

 M.2スロットは2基装備するのだが、2280サイズのスロットは1基搭載済みで、ユーザーが増設できるのは2230サイズまでとなる。2280サイズと比べるとちょっと割高ではあるので、容量を増やしたいなら2280サイズの大容量モデルに換装した方がいいかもしれない。

2基のM.2スロットは、2280サイズと2230サイズのM.2 SSDを同じ固定ネジで止める構造になっていた

ハイエンドモデルらしい機能性や装備を満載したAtomMan X7 Ti

 基本性能の検証では、直接のライバルとなるRyzen 9 7940HSを搭載するミニPCに追いついたと言う印象で、突き放すような領域には届いていない。AMDの最新CPU「Ryzen 8000」シリーズでは、ほぼ同じ構成のCPUコアとGPUコアを内蔵していることを考えると、今後もなかなか厳しい戦いを強いられそうだ。

 とはいえ、13世代Coreシリーズではまったく太刀打ちできなかったことを考えれば、状況は大きく改善されたと言ってよい。また対応アプリが増えてくれば、Core Ultra 9 185Hが新しく搭載したNPUによって、大きく状況が変わってくることも予想される。

 UL Procyonに搭載されたAI演算処理テスト「AI Computer Vision Benchmark」で、16ビット浮動小数演算テストを行なった結果をCPU、GPU、NPUで比較したのが下のグラフだが、対応アプリなら間違いなく高速化されるのだ。

AI Computer Vision Benchmark

 また装備や機能性ではシンプルなモデルが多かったミニPCに、機能面で切り込んだAtomMan X7 Tiは、ミニPCに新しい地平線を切り開くことは間違いない。MINISFORUMによるとAtomManシリーズはハイエンドの新シリーズということであり、その先駆けとなるにふさわしい仕上がりと言ってよいだろう。

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