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Friday, December 30, 2022

超激安のミニLED搭載4K対応モニター「27M2U」を購入。光の鮮やかさと舞台が暗転した瞬間の「黒」に驚く - PC Watch

「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです

Innocn「27M2U」。27型パネルを搭載した4K対応液晶モニターで、低価格ながらミニLEDを搭載している。購入は9月だが、使い始めたのは11月末から

 長くPCや周辺機器に関する仕事をしていると、たまにビックリするような製品が、あまり聞かないメーカーから出てくることがある。今回購入したInnocnの「27M2U」もその1つだ。7万円弱という価格ながら「ミニLED」に対応するということには正直驚いた。

 他社のミニLED搭載液晶モニターや液晶TVの価格を考えると、正直ちょっと信じられない。とは言え、仕事場で利用している液晶モニターのリプレースを考えていた筆者としては、かなり心動かされたのも事実であり、結局購入してしまった。今回はこの27M2Uについて、いろいろと検証していこう。

多数のLEDバックライトを精密に制御するミニLED

 ミニLEDとは、バックライトとして利用するLEDの素子を多数組み込んで、「必要な部分のみを点灯する」というかなり特殊な制御を行なうバックライト機能のことだ。こうした制御により、明るいところは明るく、暗いところは暗くというコントラストの表現力が大きく向上する。

 簡単に原理を説明しよう。一般的な液晶モニターのパネルには、有機ELのような自発光機能はないのはご承知の通りだ。そのため光源としてバックライトを搭載しており、液晶パネルの画素をシャッターのように使うことで、バックライトからの光量や色を調整し、映像を表現している。

 ただこうした構造上、バックライトの光を完全に遮ることは難しい。たとえば真っ黒な場面でも、薄いグレーがかかったように見えるように感じる人は多いだろう。画素自体が自発光するため、画素自体の点灯を消すことで「黒」を表現できる有機ELと比べると、前述のコントラストや色再現性に劣るという弱点がある。

 こうした弱点を補う1つの方法として、いくつかのメーカーが開発し、採用しているのがこのミニLEDだ。ミニLED搭載の液晶モニターでは、バックライトとして利用するLED光源を多数搭載する。そしてそれぞれのLED光源を、画面の状態に合わせて細かく制御する。

Innocnの27M2UのWebサイトでは、液晶パネルの構造を解説している画像を掲載している。LEDの光量も最高で1,000cd/平方m、平均でも700cd/平方mとかなり明るめだ

 1つの画面でも暗い部分ではLEDの光量を低くしたり消したり、明るい場所では光量を高めたりと言った制御をきめ細かく行なうことで、映像素子自体が自発光できる有機ELと同じような仕組を作り、高いコントラスト比を実現する。

 いろいろはしょった部分はあるが、おおまかに考えればこんな技術と考えてよい。そして画素とバックライトのミニLEDを精密に制御しなければならないこともあり、ミニLEDを搭載する液晶モニターや液晶TVはかなり高い。

 たとえば、ASUSのプロクリエイター向け液晶モニター「ProArt」シリーズでこのミニLEDを採用しているのだが、いずれも20万円を超える高性能モデルである。なのに27M2Uは、Amazonの販売価格で6万9,800円。筆者は9月に行なわれた1万2,000円の割引セールで購入したため、5万7,800円だった。

 ただ安いとは言っても、約6万円は簡単には出せない金額ではある。事前にいろいろと調べたところ、一番重要な画質では肯定的な評価をしているユーザーが多かったため、えいやっと購入ボタンを押した。ちなみに現在も割引きセール中で、8,500円引きのクーポンが配布されている。

12月下旬の現在の販売価格も6万9,800円だが、8,500円割引きのクーポンが配布中

黒の美しさは今までの液晶モニターの比ではない

 これまでに有機EL TVや有機ELモニターを搭載したノートPCを何度かレビューしており、漆黒の闇に映像が浮き上がる有機ELモニターの美しさはよく知っているつもりだ。そしてそうした本物の有機ELモニターと比べると、非現実的なまでの奥行き感を感じるほどではなかったのも事実ではある。

 ただし、HDR対応のPCゲームや4K対応の各種配信動画で、雷が暗闇に走ったときの一瞬の光、そして舞台が暗転したときの暗闇のリアルさは、おおげさではなく一般的な液晶モニターの比ではない。勘違いかと思って、部屋の光源をすべて消して真っ暗な中で今まで使ってきた液晶モニターと比べても、やはり明確な違いがあった。「黒」が、しっかりと黒いのだ。

ローカルディミングをオフにして、バックが黒で白丸の画像を表示したところ。薄ぼんやりとバックライトが透過して見える
ローカルディミングをオンにすると、そうしたバックライトの透過光はほぼない状態だ。フレームとの境目も分からない

 また、そうした黒から明るい部分へのグラデーションも非常に美しく、これは購入した甲斐があったなあ、と思った。今回はPCだけではなく、PlayStation5(PS5)やメガドライブミニ、ネオジオミニといったゲーム機も接続してみたところ、HDRに標準で対応するPS5の利便性は高い。

 PS5では、27M2Uと付属のHDMIケーブルで接続するだけでHDR用の設定ウィザードが起動し、適切な設定に変更できる。ゲーム側でも対応済みであれば、ユーザーのほうで何か設定する必要はなかった。

Amazon.co.jpの抽選販売で購入できたPS5を、フルスペックで楽しめる環境をようやく手に入れた

 PS5用のいくつかのゲームソフトをプレイしたところ、HDRによる光や闇の表現はWindows版と似たような印象を受けた。個人的には、4K解像度をサポートする「Ultra HD Blu-ray」対応の映画ソフトを鑑賞したときの感動が一番大きかったように思う。そもそも今までは、フルスペックの環境でこれを再生する機会はなかったわけだし……。

 たとえば「天気の子」では、何度か場面切り換えで暗転するが、前述した通り真っ暗な画面になる。また途中で雷が落ちる場面があるのだが、画面を走る稲光の質感もすごい。液晶TVやPCと接続した液晶モニターでは味わえなかった、映画館での体験がここにあるように思った。もちろん部屋は真っ暗にして鑑賞しよう。

 ちなみにHDRモードを有効にすると、ゲームやUltra HD Blu-ray映像ソフトの視聴時は問題ないが、一般的な作業中だとちょっと明るくて目が疲れてくるようにも思う。しかしOSDでは輝度やコントラスト比を調整する項目がグレーアウトしてしまい、調整できなくなる。

HDRが有効のときは、ほとんどの設定項目が利用できない状況になる

 そこでWindowsの設定アプリにある[システム]の[モニター]から、さきほどのHDR項目を確認してみると、明るさを設定できるバーがあった。とりあえずこれを使って明るさを低くして調整することで、目への負担は少なくなったように感じる。

 液晶モニター自体の設定はそのままに、コンテンツプレーヤーのほうから調整することを想定しているのだろう。複数台の機器を接続し、それぞれにマッチした設定で利用することを考えると、なるほど合理的だ。

 ただ、本当に明るさしか調整できない状態なので、もうちょっと細かい設定を行ないたい場合は同じく設定アプリからHDRの設定を無効にするとよい。すると液晶モニターのOSDでグレーアウトしていた項目が元に戻り、設定できるようになる。

画質面では文句なし、しかし新機種も気になる……

 あまり聞いたことのないメーカーではあるので不安はあったが、実際に使ってみるとかなりよい製品であることが分かった。最後の運用面でちょっと悩ましい結果になりそうだったが、HDRの設定をショートカットキー割り当てることで解決。当初の予定通り、メインPCとゲーム機兼用のモニターとして、また長く使っていきたいものだ。

 ところがつい先日、同じInnocnからやはり27型で4K対応の新モデルが発売された。パネルサイズやミニLEDの搭載など27M2Uに似たスペックやデザインを採用するほか、HDMI入力端子はHDMI 2.1対応でUSBハブ機能に対応、さらには4K解像度で160Hzのハイリフレッシュレートにも対応するという。

27M2Uと同じく、この価格だとちょっとおかしくない?と言いたくなるスペックを誇る「27M2V」

 現状ではまさしくハイエンドと言ってよいほどのスペックであり、本来は20~30万円でもおかしくない製品だが、Amazonの販売価格は12万5,000円。そして現在も1万5,000円引きのクーポンが付いており、何と11万円だ。うーん、本当に悩ましい……。

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