“社会に強制されている”という意味合いを持たせたかった
―『POPGATO』は“消費”をテーマとして制作されたそうですが、タイトルの意味も含めてその意図を教えてください。 タイトルは、“ポップアート”と“オブリガート”という2つの言葉を合わせた造語になっています。前者は1950年代から60年代にイギリスやアメリカで流行った大量生産消費社会をテーマとした芸術運動なんですけど、今作のタイトルを考えていたときに、そのテーマの座標を完全に固定する役割を持ったというか。そういう概念としてピッタリだなと思って選んだんです。ただ、それをそのままタイトルにするのは、僕の中で違うなと思ったので、音楽用語で主旋律の引き立て役の短いフレーズという意味のあるオブリガートという言葉を付け加えました。ミニ・アルバムのイメージにも合うし、オブリガードという言葉には“強制された”という語源があるらしくて、“社会に強制されている”という意味合いを持たせたくて、このタイトルにしました。 ―これまでの作品とは違う発想だったわけですか? まったく違うものが生まれたなと思っています。これまで2枚のアルバムを出しているんですけど、自分が音楽を続けていく中で感じた何かを題材にするということはそこまでしていなくて。それが、今回はわりとコンセプチュアルに出たというか。自分が率直に感じたこととか、他のクリエーターとかが抱く苦しみみたいなものを見ているうちに、それをキチンと形にしたいなと思ったのが始まりです。ただの受け取り手だった状態から作り手に身を置いたことで、沢山の気付きや刺激があったので、何としてもそれを表現したいと思いました。あとは、界隈を見ていて、今のジャンクフード化、ファストフード化してるエンタメにはびこる逆らえない大きな流れに対する感情みたいなものがあったので。それをもとに制作をしていました。ただ、それでみんなの思考を変えてやろうとか説教してやろうとか、そういう気持ちはまったくなくて。その流れは止まることはないし、これからもずっと流れ続けていくけど、その中でも自分の作品はこうして生きている、今後も生きていくということを証明するために、こういったテーマを作り上げていったのかなと思っています。 ―そんな思いが、作品として昇華された? そうですね。結構、冷え切った視点から見ているだけじゃない作品になったかなと思います。自分もその中の1つだし、逆に言えば自分も消費者の一部だし、どっちからも見れたなという手応えはありました。自分は結構、現代社会にはびこる闇みたいなものに敏感なんです。それって得てして表層的なところでは、みんなに親しまれたりして、その輪の中に自分もいると思っているんです。でもその中にいると、良い部分だけじゃなくてどんどん嫌な部分も見えてくるんですよね。そこを深堀りするとさらに目をそむけたくなる事実が出てくるというか。そこにインスピレーションを受けて楽曲が出てきたというのがあります。最近、SNSは社会そのものじゃないかなと思っているんですけど、自分は最初から一貫して「音楽で人間を描きたい」という気持ちでやっているので、SNSに振り回されていたり苦しめられている人間がいるなら、社会自体も無視できない存在なんじゃないかなと思っています。
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