クラッシック・ミニ なぜ街でよく見る?
text:Kenichi Suzuki(鈴木ケンイチ) editor:Taro Ueno(上野太朗) 【写真】レトロなミニと最新電気のミニ【比べる】 (65枚) クルマ趣味の1つに「クラシックカー」がある。 クラシックカーには今のクルマにないデザインや内装、素朴なメカニズムなど、独特の魅力がある。 しかし、車両価格も高いし、購入後の手間もかかり、趣味としてのハードルが高い。 そんな状況下でも街で目にするミニが多いと思う人は多いだろう。 ここでいうミニは、BMW製ではなく、その前の1959年から2000年にかけて製造されたミニのこと。別名、クラシック・ミニやローバー・ミニ、BMCミニなどとも呼ばれる、小さな箱型のクルマだ。このミニが選ばれる理由を考えてみたい。
ミニマルな姿 偉大さそのもの
まず、大前提としてミニが、偉大なクルマであることが重要だ。 手間暇とお金をかけて愛車にするのだから、それ相応しい価値がなければ、クラシックカーとして選ばれることはあり得ないからだ。 ミニの偉大さは、そのミニマルな姿そのものにある。あれほどの小さな車体寸法でありながら、大人4人の乗車を実現したパッケージングの巧みさ、メカニズムの先進性の高さが高く評価されたのだ。 ミニが誕生した1959年としては衝撃的な姿であったのだ。 しかも、この小さなクルマがモータースポーツで大活躍した。その舞台はラリー。とくに高性能版のミニ・クーパーは、現在のWRC(世界ラリー選手権)の前身となる、1960年代のモテカルロ・ラリーなどで、何度も総合優勝を飾っている。 ミニよりも大きなエンジンを搭載するポルシェ911や、メルセデス・ベンツ、シトロエンなどを下しての優勝は、世界中に大きな驚きを与えたのだ。そのためミニ=ミニ・クーパーと勘違いしている人も多い。
敢えて「変わらぬ姿」が評価される
小さくて、価格が手ごろなのに、モータースポーツでも大活躍したミニ。当然、世界中で大ヒットとなる。 ここで、もう1つ驚くのは、モデルチェンジをおこなわなかったことだ。 日本車であれば新車として登場したモデルは、6年ほどで次世代モデルに世代交代をする。いわゆるフルモデルチェンジだ。 ところが、ミニはフルモデルチェンジをおこなわずに、改良だけで延々と作り続けられた。当然、売れ行きは落ちてゆく。 しかし誕生から20年を過ぎた1980年代ごろから、世間のミニを見る目が変わってきたのだ。 現在の実用のための車ではなく、クラシカルな趣味のクルマとポジションを変化させてゆく。この頃から、日本での人気もどんどんと高まってゆき、1990年代になると、日本がミニのメイン市場となっていたのだ。 その結果どうなったかというと、日本にはミニの中古車が数多く存在することになった。 しかも、ミニは2000年まで生産されていたが、基本設計は1959年のまま。 つまり、最終型に近い約20数年前の中古車であっても、中身のメカニズムは約60年も前ということになる。より古いメカニズムを手に入れやすいのだ。 さらに英国には古いモノを大切にしようという文化もあることから、日本車よりも部品供給という点では有利だ。 そして大衆車ということもあり、そもそもの部品の値段も安い。
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