軍用という要求が生み出す、ツールとしての美しさ
要素を強調したファッションが再注目を浴びているが、そのなかで見逃せないのがミリタリーの復興だ。時計においても、それに引っ張られるようにミリタリーウオッチの注目度がアップしている。 ミリタリーはもともと時計界で重要な位置を占めてきたジャンルだが、ここ数年は特に各ブランドが積極的に製品展開している様子が見受けられる。 現在のように通信機器が発達していなかった時代、離れた戦場で同時に作戦を遂行するためには、正確な時計がなくてはならない重要なツールだった。腕時計が生まれたのも作業中にわざわざ懐中時計を取り出さなくても時間が確認できるようにしたかったゆえで、戦場というタフな環境でも使えるように堅牢性もどんどん向上していった。 一瞬で時刻が読み取れるよう視認性が重視され、そのためにデザインはシンプルで実用重視の無骨なものになっていったが、それがかえってツールとしての美しさにつながっていった。ダイバーズウオッチやパイロットウオッチといった特殊な機能の時計も、戦場での要求に応えて開発されたものだ。 つまり、現在使われている時計の多くの機能が、ミリタリーウオッチから派生していったものだと考えていいだろう。機能を追求した結果として生まれたスタイリングも、時計ファンの心をくすぐる重要なファクターとなっている。
無骨な忠実系から洗練のモダン系まで。多彩なミリ顔ダイバーズ
例えば、深海という究極の環境下で潜水士や特殊工作員の生命を預かるミリタリーダイバーズは、1936年にパネライがイタリア海軍特殊潜水部隊のために開発したのがはじまり。 53年にはブランパン フィフティ ファゾムスが製品化され、その後ロレックス サブマリーナやオメガ シーマスター300といった、現在も人気のある名作が相次いでリリースされた。 100m以上の深海でも壊れない本格的な防水性能を持ったこれらの時計は、酸素ボンベの残量を計測するためのベゼルに逆回転防止機構、飽和潜水時にヘリウムガスを外部に逃すエスケープバブル、暗い深海でも光を放って時間の読み取りを可能にする夜光インデックスなど、目的に即した非常に特徴的な機能が搭載されるようになる。 現行ダイバーズでは、セラミックやカーボンなどの新素材をいち早く取り入れるなど、ハイテクの採用に関しては積極的なジャンルだ。そうしたハイテクモデルを選ぶか、伝統的デザインを受け継いだ定番を選ぶか、時計ファンとしてはなかなか奥深いジャンルである。 今回ピックアップした3本は、3者3様、まったく個性の異なるモデルだが、いずれも軍用時計をルーツにもつ、珠玉のミリ顔ダイバーズウオッチだ。
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June 10, 2020 at 04:10PM
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